
はじめに
体外受精治療を検討する女性の多くが、ホルモン療法による体重増加を懸念しています。今回、GnRHアンタゴニスト法を用いたIVF治療において、最大3周期までの体重変化を前向きに検討したコホート研究をご紹介いたします。
ポイント
GnRHアンタゴニスト法による体外受精治療では、待機期間中も卵巣刺激中も、また最大3周期の治療後においても、臨床的に有意な体重変化は認められませんでした。
引用文献
Saar-Ryss B, et al. Front Reprod Health. 2024 Jan 8;5:1327110. doi: 10.3389/frph.2023.1327110.
論文内容
GnRHアンタゴニスト法を用いた体外受精治療を受ける女性において、最大3治療周期後の体重変化を検討することを目的とした前向きコホート研究です。2018年から2019年の間にIVF治療を受けた患者を対象としました。各患者は治療周期中に3回の体重測定を受けました。治療前の診察時、ホルモン刺激開始時、そして妊娠判定日である周期終了時です。患者はBMIに基づいて、正常体重(BMI<25)、過体重(BMI 25~30)、肥満(BMI>30)の3群に分類されました。最終的に、合計519治療周期(正常体重群240周期、過体重群131周期、肥満群148周期)における体重を検討しました。
結果
全体として、患者の体重変化は、待機期間中でも性腺刺激ホルモン投与期間中でも、また1回目、2回目、3回目の治療周期のいずれにおいても臨床的に有意ではありませんでした。1回目、2回目、3回目の治療周期後に記録された平均総体重変化は、それぞれ0.26±1.85kg、0.4±1.81kg、0.17±1.7kgであり、これは初期体重の0.36%、0.56%、0.23%の変化に相当します。この1%未満の体重変化は、臨床的に有意な体重増加とされる5~7%を大きく下回っています。
BMI群別のサブグループ解析では、1回目の治療周期において、全体では346名(正常体重47.7%、過体重24.3%、肥満28%)が含まれました。正常体重群では初期体重57.54±7.3kgから最終的に58.01±7.56kgへと0.47±1.65kg増加(0.81%増、p=0.010)、過体重群では71.97±7.09kgから72.19±7.59kgへと0.21±1.84kg増加(0.29%増、有意差なし)、肥満群では91.55±10.75kgから91.51±11.07kgへと0.04±2.12kg減少(0.04%減、有意差なし)が認められました。2回目の治療周期では130名が対象となり、正常体重群で0.07±1.4kg増加(0.12%増、有意差なし)、過体重群で0.42±1.89kg増加(0.59%増、有意差なし)、肥満群で0.86±2.17kg増加(0.93%増、p=0.025)でした。3回目の治療周期では43名が対象となり、正常体重群で0.12±1.15kg増加(0%増)、過体重群で0.13±3.26kg減少(0.17%減)、肥満群で0.37±1.46kg増加(0.39%増)が認められましたが、いずれも統計学的有意差はありませんでした。
全周期を通じて、臨床的に有意とされる5~7%以上の体重増加または減少が観察されたのは、それぞれ全周期の1.98%と0.54%のみでした。ゴナドトロピン総投与量は肥満群で最も多かったものの(1周期目で平均2770.5IU vs 正常体重群1770IU、過体重群2414IU)、これは体重変化と相関しませんでした。
私見
Suthersan D, et al. (Hum Fertil. 2011)の報告では、66名のIVF患者において調節卵巣刺激の終了時に平均体重が増加したものの、治療周期の終了時にはベースライン体重に戻ることが示されています。また、Tso LO, et al. (Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2021)の後方視的研究では、734名の女性において統計学的に有意な体重増加(平均387.7±720.4g)が認められましたが、これは浮腫による一時的なものであり臨床的には無関係と結論づけられています。
不妊治療は体重が増えるというのは都市伝説に近いのかもしれませんね。
「臨床的に有意な体重増加は、患者の初期体重の少なくとも5~7%の変化と考えられる」
は抗精神病薬や人工股関節置換術後の体重変化に関する研究である下記論文を基準に設定したようです。
Barton BB, et al. Expert Opin Drug Saf. 2020;19(3):295-314.
Riddle DL, et al. Osteoarthritis Cartilage. 2013;21(1):35-43.
文責:川井清考(WFC group CEO)
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