研究の紹介
参考文献
日本語タイトル
特発性乏精子無力精子奇形精子症におけるシンバイオティクスおよびSperiGenサプリメント投与が精液所見に及ぼす影響の検討:二重盲検ランダム化比較試験
英語タイトル
Investigating the Effect of Synbiotic and SperiGen Supplementations on Spermatogram in Idiopathic Oligoasthenoteratozoospermia: A Double-Blinded Randomized Clinical Trial.
PubMedよりCitation
Zarehoroki A, 他. Int J Urol. 2026 Jan;33(1):e70255. doi: 10.1111/iju.70255. PMID: 41387285.
はじめに
近年、腸内環境が精巣機能に影響を及ぼす「腸活」が注目されていますが、最新の研究でその重要性が改めて示されました。本試験は、以前紹介した知見を一歩進め、臨床で汎用される抗酸化サプリメントとシンバイオティクスの併用効果を検証したランダム化比較試験です。単独投与と比較した検証であり、不妊治療の現場における実情に即した極めて重要なエビデンスと言えると思います。
研究のポイント
- シンバイオティクス(FamiLact)と抗酸化サプリメント(SperiGen)の併用は、精液所見の改善に相乗的な効果をもたらします。
- 抗酸化剤単独と比較し、精子の前進運動率が向上し、DNA断片化指数(損傷)と非運動精子数は有意に減少しました。
- 特発性乏精子無力奇形精子症(iOAT)に対し、通常の抗酸化サプリメントにシンバイオティクスを加える臨床的優位性が示されました。
研究の要旨
背景
男性不妊は、精子形成の量的・質的障害を含む多様な原因によって生じます。活性酸素種(ROS)は精子の運動性を低下させ、DNA損傷やアポトーシスを誘発しますが、抗酸化剤はこれを消去する作用を持ちます。本研究では、特発性乏精子無力奇形精子症(iOAT)患者に対し、経口シンバイオティクスと男性用マルチビタミン・ミネラルサプリメント(SperiGen)の併用が精液所見に与える影響を評価しました。
方法
iOATと診断された不妊男性73名を対象に、二重盲検ランダム化臨床試験を実施しました。患者を「SperiGen+プラセボ群」と「SperiGen+シンバイオティクス(FamiLact 500 mg/日)群」に無作為に割り付け、3ヶ月間投与しました。介入前後に精液パラメータを測定し、両群間で比較しました。
結果
シンバイオティクス併用群は、プラセボ群と比較して精子の前進運動率を有意に向上させ、DNA断片化率(DFI)を有意に改善しました(いずれもp=0.001)。また、非運動性精子の割合も有意に減少しました(p=0.018)。群内比較では、プラセボ群の非前進運動率を除き、両群ともすべての指標で介入前後に有意な改善が認められました。
結論
シンバイオティクスと抗酸化サプリメント(SperiGen)の併用は、抗酸化剤単独使用と比較して、精子DNA断片化の抑制、精子濃度および前進運動率の改善においてより高い効果をもたらすと考えられます。
図.精液所見、DFIの変化


私見と解説
今回の研究は、男性不妊における「腸内環境」の重要性を高いエビデンスレベルで示した注目すべき報告です。欧州泌尿器科学会(EAU)のガイドラインでも取り上げられ始めたシンバイオティクスですが、臨床現場で広く用いられる抗酸化サプリメントとの併用によってさらなる相乗効果が得られる点は、非常に実践的な知見といえます。これは、腸内細菌由来のエンドトキシンが血流に入り性腺機能を低下させるとする「GELDING理論」を臨床的に裏付けるものでもあります。FamiLactに関する報告は今回で3例目となりますが、異なる施設での検証においても再現性が示されており、男性不妊治療の新たな選択肢として信頼性が高まりつつあります。なかでも、受精能に直接関わるDNA断片化指数の有意な改善効果は注目に値します。今後はより大規模な多施設共同研究によって、最終的な妊娠アウトカムへの寄与が明らかにされることを期待します。
文責:小宮顕(亀田総合病院 泌尿器科部長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。