一般不妊

2021.01.07

AMHが低いと早く閉経するの?

はじめに

AMHを測定し患者様に説明する際に、値が低い患者様の多くが次のように質問されます。 
「私って、普通の人に比べて閉経が早いんですか?」 
早く閉経するということの定義は中々難しいと思いますが、女性の平均閉経年齢は51歳前後です。早く閉経するかどうかについて何本かの報告がありますので簡単にご紹介させていただきます。 
実際AMHが卵胞にどのようなメカニズムで作用しているかどうか不明ですが、AMHは原始卵胞の発育において抑制的に働きます。AMHがないと原始卵胞のプールは急速に枯渇することがマウスでは確かめられています。 
つまりAMHが低いために原始卵胞が早く消費されてより低くなっているのか、原始卵胞が元々少ないのでAMHが低くなっているのかは分かっていません。 
現在のところAMHと閉経について分かっていることを箇条書きにしてみます。 

ポイント

  1. 採血時年齢とAMH値を組み合わせて閉経が大体何歳くらいという予測はできなさそう 
  2. 早発閉経が起こる頻度は予測できそう
  3. 閉経間際のヒトにおける閉経予測因子としては役立ちそう 

引用文献

  1. W Hamish B Wallace, et al. PLoS One. 2010. DOI: 10.1371/journal.pone.0008772. 
  2. Elizabeth R Bertone-Johnson, et al. Hum Reprod. 2018. DOI: 10.1093/humrep/dey077. 
  3. M Depmann, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2018. DOI: 10.1210/jc.2018-00724. 
  4. Joel S Finkelstein, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2020. DOI: 10.1210/clinem/dgz283. 

論文1

採血時年齢とAMH値を組み合わせて閉経が大体何歳くらいという予測はできなさそう 
原始卵胞の数から閉経を予測した報告です。原始卵胞は胎児期に500-700万個まで増え、生まれた時にはすでに100-200万個に減少し、思春期には10-30万個になり1ヶ月約1000個ずつで確実に減少し、450回ほどの排卵を繰り返し閉経します。原始卵胞の急速な減少は約25,000個の卵胞が残っている37歳前後に起こり約12~14年後に閉経することと報告しているものもあります。過去の報告から卵胞中の原始卵胞数の減少モデルを構築し検証を行うと、原始卵胞が多い名(AMHが高い名)ほど低下の割合が大きく、結果として閉経時期の差はそれほど大きくないとしています。 

論文2

早発閉経が起こる頻度は予測できそう 
32~44歳の女性を対象としAMH値が早発閉経と関係があるかどうか調べた論文です。 
早期閉経症例群(n=327)は、採血時(1996-1999年に閉経前にとったもの)から45歳までの間に自然閉経を報告した女性と、対照群(n=491)は45歳以降に閉経した女性で他の要因を早期閉経症例とあわせマッチした327例を対象としAMHを測定し検討しています。様々な因子を調整した後でも、AMHが0.10ng/mL減少するごとに早期閉経のリスクが14%増加しました。またAMH値が2.0ng/mLの女性に比べて1.5、1.0、および0.5ng/mLの女性の早期閉経のオッズ比は2.6、7.5、および23でした(いずれもP<0.001)。喫煙状態、脂肪率、不妊歴、月経周期の特徴にかかわらず、有意な関連が観察されています。AMH値と早発閉経の予測は42歳まで関連があるとしています。AMH値の低さと早期閉経のリスクの高さとの間に強い有意な関連があることを確認しました。 

論文3

採血時年齢とAMH値を組み合わせて閉経が大体何歳くらいという予測はできなさそう/早発閉経が起こる頻度は予測できそう 
早発閉経は年齢にAMH値を加えた方が関連は強いが個々の症例ベースでは難しいという論文です。 
PubMed、Embase、Cochraneデータベースを用いてAMHと閉経の関係を調査しました。2596名の女性を対象とし、1077名が閉経した女性が含まれていました。多変量Cox回帰分析では、年齢とAMHを用いて閉経までの時間を評価したところ、年齢が強い因子としてあがり、AMHを付加してもそこまで予測能力は改善しませんでした。さらに、早発閉経(45歳以下)と後発閉経(55歳以上)を予測するAMHの能力を評価したところ、早期閉経については、年齢だけではなくAMHを付加した方が予測効果が示されました。ただし個々の症例別でのAMHに基づく閉経年齢の予測は依然として困難であるとしています。 

論文4

閉経間際のヒトにおける閉経予測因子としては役立ちそう 
閉経間際ではAMHが感度以下になっている症例が多い、またAMH値が高いとすぐには閉経しないことを示した論文です。 
Study of Women’s Health Across the Nation(SWAN)に参加している女性を対象(1996年から1998年までに、過去3ヵ月間に月経があり、42歳から52歳までの女性3302名のなかで1537名を対象としました)としFMPは無月経12ヵ月前の最後の月経と定義しました。最初の採血から最後の月経までの平均期間は57±38ヶ月でした。AMHは最後の月経に近づくにつれて進行性に減少し、最後の月経の12~24ヶ月前に採取されたサンプルの14%、最後の月経の0~12ヶ月前に採取されたサンプルの25%、最後の月経の0~12ヶ月後に採取されたサンプルの42%でAMHが感度以下となりました。 
AMHが10pg/mL未満の48歳未満の女性が次の12ヵ月間に最後の月経を経験するという予測値は51%でしたが、51歳以上の女性では79%に増加しました。48歳未満の女性でAMHが100pg/mLを超えている場合、12ヵ月後に最後の月経を経験しないという予測値は97%であり、51歳以上の女性では90%でした。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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