治療予後・その他

2021.04.14

体外受精妊娠の子供の成長パターンは?(BJOG. 2019)

はじめに

生殖補助医療(ART)により妊娠した児は、多胎妊娠のリスクが高いことによる周産期合併症のみならず、単胎児においても低出生体重、在胎期間短縮、small for gestational ageのリスクが高いことが報告されています。しかし、これらの児の出生後の長期的な成長に関する追跡調査は限られており、結果も一貫していません。複数の研究では、子宮内発育不全は小児早期にキャッチアップすることが示唆されていますが、一方で、身長や体重が自然妊娠児と比較して低いままであり、IVF/ICSI妊娠児の代謝が恒久的に変化している可能性を示唆する研究もあります。IVFとICSIはそれぞれ1978年と1981年に導入され、この世代の子どもたちが成長するにつれて、彼らの健康と発達を継続的にモニタリングすることが重要です。今回、IVF/ICSI治療後に妊娠した子どもの出生後の身長と体重について、自然妊娠で生まれた子どもと比較した既存文献を系統的にレビューし、メタアナリシスを実施した報告をご紹介いたします。
なお、このメタアナリシスはMaria C Magnusらの報告、「体外受精妊娠の子供の成長パターンは?( Hum Reprod. 2021)」はまだ含まれていません。

ポイント

IVF/ICSIは長期的な体重および身長とは関連しませんでした。就学前年齢(0-4歳)では体重がわずかに低い傾向がありました。

引用文献

Bay B, et al. BJOG. 2019;126:158-166. doi: 10.1111/1471-0528.15456.

論文内容

IVF/ICSI治療後に妊娠した子どもの出生後(新生児期以降)の身長と体重について、自然妊娠で生まれた子どもと比較することを目的としたシステマティックレビューおよびメタアナリシスです。PubMed、Embase、Scopusを用いて文献検索を実施しました。IVF/ICSI治療により妊娠した単胎児を曝露群とし、自然妊娠した単胎児を対照群とするコホート研究またはケースコントロール研究を選択基準としました。研究は少なくとも2名の著者によってレビューされ、メタアナリシスはCochrane Review Managerを用いて実施されました。研究の質はNewcastle-Ottawa Scale(NOS)で評価されました。

結果

20件の研究がレビューに含まれ、そのうち13件がメタアナリシスの対象となりました。メタアナリシスでは、IVF/ICSI後に生まれた3,972名の子どもと、自然妊娠で生まれた11,012名の子どもを比較しました。最長平均フォローアップ期間は22年でした。子どもの体重に統計的に有意な差は認められませんでした(体重の平均差[MD]-160g、95%CI -360、3、異質性I²=39%)。この結果は、元々平均値と標準偏差を報告していた研究のみを含めた感度分析(MD -160g、95%CI -370、5、I²=44%)、および「高品質」と分類された研究のみを評価した感度分析(MD -70g、95%CI -300、150、I²=19%)でも頑健でした。フォローアップ時の子どもの年齢で層別化すると、IVF/ICSI治療後に妊娠した子どもでは、就学前年齢までの時点で有意に体重が低いことが示されました。0-4歳の自然妊娠児と比較して、IVF/ICSI治療後に妊娠した子どもは統計的に有意に体重が低い結果でした(MD -180g、95%CI -320、-4、I²=0%)。しかし、この年齢を超えると体重差はもはや有意ではありませんでしたが、信頼区間はかなり広くなりました(5歳以上:MD -160g、95%CI -580、260、I²=52%)。妊娠方法(IVFまたはICSI治療)で層別化したメタアナリシスも実施されました。自然妊娠対照群と比較して、IVF治療後に妊娠した子どもは体重が低い傾向がありましたが、統計的には有意ではありませんでした(MD -210g、95%CI -730、310、I²=74%)。同様に、ICSI治療後の子どもの体重は対照群と同等でした(MD -150g、95%CI -350、60、I²=0%)。IVF/ICSI治療後に妊娠した子どもと自然妊娠対照群の小児期の身長を比較したメタアナリシスでは、適格研究間で統計的に有意な差は認められませんでした(MD 0.13cm、95%CI -0.20、0.47、I²=24%)。「高品質」研究のみの感度分析、およびIVFまたはICSI治療に曝露を分類した研究でも同様の結果が得られました。さらに、子どもの年齢に応じて分類した身長のメタアナリシスでは、0-4歳の年齢群(MD 0.10cm、95%CI -0.69、0.49、I²=40%)または小児期後期(MD 0.27cm、95%CI -0.15、0.68、I²=17%)のいずれにおいても、IVF/ICSI治療による妊娠との関連は認められませんでした。

私見

研究によってIVF/ICSI-ET児の長期予後には様々な見解があります。体外受精や顕微授精、不妊治療を受けて生まれた子どもの成長と代謝については、さらに長期的な追跡調査が必要ですね。でも今のところ問題がないという報告が多いので、それはそれで治療に関わる医師として少しほっとする部分もあります。

①小さく産まれてきたりする成長障害は就学前においつくという考えの報告
(Yeung EHら. 2016, Woldringh GHら. 2011, Koivurova Sら. 2003, Knoester Mら. 2008, Ceelen Mら. 2008, Bonduelle Mら. 2004)

②自然妊娠した子どもに比べて身長や体重が低い状態が続くという報告
(Saunders Kら. 1996, Miles HLら. 2007, Green MPら. 2013)

③胎児期・新生児期の早期キャッチアップ成長が、その後の罹患リスクと関連することを示した報告
(Barker DJPら. 1993, Eriksson JGら1999)

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 体重、BMI

# 出生児予後

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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