一般不妊

2021.07.16

黄体機能不全のcommittee opinion(Fertil Steril. 2021)

はじめに

「黄体機能不全」は、不妊治療で悩んでいる女性が一度は耳にするキーワードです。一般的に、黄体期の長さが10日以下となる場合をさします。原因としては、プロゲステロンの持続期間不足、プロゲステロン濃度不足、子宮内膜のプロゲステロン抵抗性などが考えられます。黄体機能不全は病状との関連だけでなく、妊娠可能で正常に月経がある女性にも報告されています。黄体機能不全の不妊症や反復流産との関連、診断方法、治療方法の米国生殖医学会committee opinionをご紹介いたします。2015年度版を改定したものとなっています。 

ポイント

黄体機能不全は黄体期10日以下と定義され、不妊症との関連が示唆されていますが、自然妊娠可能な女性にも認められます。診断には黄体期の期間とプロゲステロン値を総合的に評価しますが、単回測定での判断には限界があります。治療は基礎疾患の改善が第一であり、卵巣刺激時のプロゲステロン補充は有効ですが、自然周期での有効性は不明です。 

引用文献

Diagnosis and treatment of luteal phase deficiency: a committee opinion 
Fertil Steril. 2021. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2021.02.01

論文内容

正常な黄体の生理機能 

  • 通常の黄体期の期間は12〜14日と比較的フィックスされていますが、11〜17日の場合もあります。 
  • プロゲステロン値は、非妊娠周期では排卵後6〜8日でピークに達します。 
  • プロゲステロンはLH制御下でパルス状に分泌されます。 
  • プロゲステロンパルスは黄体中期から黄体後期にかけて顕著であり、プロゲステロン濃度は90分以内に最大8倍まで変動することがあります。 
  • 受精胚が子宮内膜に着床すると、黄体によるプロゲステロンの分泌はhCG値の上昇に依存します。 
  • hCG値が上昇しないとプロゲステロン値の低下に直結します。 

黄体機能不全について 
黄体機能不全は1949年に初めて報告されました。臨床的黄体機能不全は、黄体期の長さが10日以下を指すことが一般的です。正常な妊娠の成立には黄体期が重要であることから、黄体機能不全は不妊症や反復流産との関連が示唆されています。しかし、自然妊娠ができる女性でも黄体機能不全は報告されていて、黄体機能不全が独立因子として不妊症や反復流産の原因となるかはわかっていません。 
妊娠した周期では、妊娠しなかった周期と比較して、プロゲステロンがより急速に上昇し、黄体中期のエストロゲンおよびプロゲステロン濃度が高くなることを一部の研究者は報告していますが、着床初期のHCG分泌との関連も十分考えられ、プロゲステロン分泌が良いから妊娠しやすいかどうかは議論され続けています。 

黄体機能不全は「機能的な分泌性子宮内膜を維持し、正常な胚の着床と成長を可能にするために、プロゲステロンの分泌量や期間が十分でない状態」とされています。 
黄体期の短さはFSH濃度の低下、卵胞期のエストラジオール濃度の低下、卵胞期のFSH/LH比の変化、FSHとLHのパルス分泌異常と関連しています。また、黄体機能不全は、適切なホルモン値・期間があっても子宮内膜のホルモン抵抗性により起こす場合もあります。黄体機能不全に関連する病態の例としては、視床下部性無月経、摂食障害、過度の運動、著しい体重減少、ストレス、肥満、PCOS、子宮内膜症、加齢、21-水酸化酵素欠損症、甲状腺機能障害、高プロラクチン血症、卵巣刺激や体外受精治療があげられています。 

黄体機能不全に提案されている検査・治療法 
黄体機能不全の検査は黄体期の期間やプロゲステロン値を組み合わせて総合的に判断することが一般的です。子宮内膜生検は、黄体前期、黄体中期、黄体後期を区別する精度しかありません。ただし、どの検査にしても不妊女性か妊娠可能女性かのカットオフははっきりしていません。 

皆さんがよく耳にする黄体中期プロゲステロン10ng/mlという基準値は、通常排卵周期において10ng/ml未満になることが31.3%あることが報告されていますし、周期ごとに異なるため、一度の黄体中期プロゲステロン値を測定して診断をつけるには限界があるとされています。しかし排卵がある女性の中で黄体期が10日未満の女性を黄体機能不全と定義したときに、ほぼ全員が黄体中期プロゲステロン10ng/ml未満であったことから、基準値として10ng/mlという値が用いられるようになったようです。報告者らは黄体期が10日未満であり、黄体中期プロゲステロン10ng/ml未満であれば全体の8.2%程度であり、このような場合は臨床的に意味がある黄体機能不全と定義してもいいのではないかと提案しています。 

黄体機能不全の治療は原因となる基礎疾患の改善が第一です。また卵巣刺激などを行った場合は医原性の黄体機能不全を起こすため、プロゲステロン補充が有効です。しかし卵巣刺激を行わない自然な周期の妊娠率改善にプロゲステロン投与が寄与するかどうかはわかっていません。 

私見 

当院で行っている黄体期採血は、行うかどうかを患者様ごとに個別に検討しています。 
上記にも書かれてある通り、一度のプロゲステロン値で黄体機能がある、ないという議論は不毛だなと感じています。黄体補充は全ての患者様には行っておりませんが、基礎疾患や現在行っている卵巣刺激などから黄体機能不全の発症が疑われる場合には事前に提案するようにしています。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# プロゲステロン/プロゲスチン

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# 月経異常

# 総説、RCT、メタアナリシス

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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