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2021.09.17

精索静脈瘤手術は精子DNAダメージを改善する(Fertil Steril. 2021)

はじめに

精索静脈瘤手術は夫婦として時間的にゆとりがある場合は、先に手術を実施することをお勧めしますが、術後、精液所見の改善まで3-6ヶ月かかることなどを加味すると、一般不妊治療で妊娠しない場合に体外受精を先に行うか、精索静脈瘤手術を先に進めるかを迷うことが多くあります。一般的な精液所見に加え、DNAフラグメンテーションテスト(DNA断片化試験)も判断材料に加わるとより患者様にお話しやすくなります。
その上で、手術をしたらDNAダメージがどの程度軽減するのか目安となるシステマティックレビューをご紹介いたします。

ポイント

精索静脈瘤手術によりDNAフラグメンテーションが3-8%低下することが複数のシステマティックレビューで示されており、特に術前DNAフラグメンテーションが高い症例でより顕著な改善が期待できます。

引用文献

Lira Neto FT, et al. Fertil Steril. 2021. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2021.04.003

論文内容

精索静脈瘤手術を受けた不妊男性を対象とし術前後のDNAフラグメンテーションの変化を検討しました。PubMed/Medline、EMBASE、Cochrane’s central database、Scielo、Google Scholarを用いて系統的検索を行い2021年1月までに報告された関連研究を同定しました。ランダム効果モデルを用いた加重データのメタ解析を行いました。
結果は加重平均差(WMD)と95%信頼区間(CI)を計算しました。サブグループ解析は、DNAフラグメンテーションテストの方法、精索静脈瘤手術の方法、術前のDNAフラグメンテーションレベル、精索静脈瘤のグレード、フォローアップ期間などを検証しました。

結果

1,070人の患者が参加した19の研究からDNAフラグメンテーションを検討しました。精索静脈瘤手術は、術後のDNAフラグメンテーションの低下と関連していました(WMD 7.23%;95% CI:8.86 – 5.59;I2=91%)。検査方法(SCSA、TUNEL、SCDテスト)はどの方法でもDNAフラグメンテーションの低下を認めました。サブグループ解析の結果、治療効果は術前DNAフラグメンテーションが高い方が顕著に低下を認めました。精索静脈瘤グレードが術前後のDNAフラグメンテーションの低下と相関はしていませんでした。
精索静脈瘤がある不妊男性は手術を実施するとDNAフラグメンテーションが低下することがわかりました。

私見

同じようなシステマティックレビューがあります。これらを総合的に判断すると精索静脈瘤手術はDNAフラグメンテーションを3-8%低下させます。

①6つの研究と177人の患者
Wang YJ, et al. Reprod Biomed Online 2012
3.37%;95% CI:4.09 – 2.65;I2=49%

②11の研究から394人の患者
Qiu D, et al. Andrologia 2021
5.79%;95% CI:7.39 – 4.19;I2=73.7%

③7つの前向き研究と289人の患者
Birowo P, et al. Basic Clin Androl 2020
6.86%;95% CI:10.04 – 3.69;I2=82%

術前DNAフラグメンテーションが高い不妊男性の方が低下は大きくなります。
今後、DNAフラグメンテーション検査と精索静脈瘤手術を患者様にどのように系統立てて説明・実施提供するか、模索していくためにも引き続き検討が必要です。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 手術

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# 精索静脈瘤

# 総説、RCT、メタアナリシス

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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