一般不妊

2021.09.27

肥満を伴わないPCOS患者でも妊娠率は低下する?( Reprod Biomed Online. 2017) 

はじめに

肥満は妊娠転帰不良の独立した危険因子であることが報告されており、PCOS患者の一定数は体重過多あるいは肥満があるため妊娠率の低下につながると懸念されていました(Metwally et al, 2008, Metwally et al, 2010)。しかし、アジアでは痩せ型のPCOS患者が一定数おり、肥満を抜きにしても胚の染色体異常や胚移植成績の悪化があるかどうか気になるところです。このあたりを調査した報告がでてきましたのでご紹介させていただきます。

ポイント

痩せ型のPCOS患者においても、正倍数性胚盤胞を移植した場合、対照群と比較して流産率が有意に高く、出生率が有意に低い結果となりました。PCOSはBMIや受精胚の染色体異常とは独立して、流産のリスクを高める可能性が示唆されました。 

引用文献

Lu Luo, et al. Reprod Biomed Online. 2017. DOI: 10.1016/j.rbmo.2017.07.010 

論文内容

PCOS患者は、非PCOS患者に比べて流産率が高いことが報告されています。PCOS患者の流産に胚の異数性がどの程度関与しているかは、まだわかっていません。 
1対3のマッチドペア研究では、年齢、BMI、胚のスコアをマッチさせた67名の痩せ型PCOS患者と201名の対照者(ともに女性平均年齢30歳前後)が、正倍数性胚盤胞移植を実施し、臨床妊娠率、流産率、出生率を比較・検討しました。流産および出生率に関連する因子をさらに評価するために、ロジスティック回帰分析を行いました。 

結果

臨床的妊娠率は、PCOS群で50.7%、対照群で55.2%でした。流産率は対照群と比較してPCOS群で有意に増加しました(P=0.029)。非PCOS患者はPCOS患者と比較して出生率が有意に高くなりました(P<0.001)。 
PCOS女性は、BMIや受精胚の染色体異常とは別に、流産のリスクを高める可能性があります。患者の卵巣刺激はGnRHアゴニスト法もしくはGnRHアンタゴニスト法、凍結融解胚移植の内膜調整はホルモン調整周期下で実施され、黄体補充はプロゲステロンの筋肉注射で実施しP+6に胚移植しています。 

私見

痩せ型の場合でも、PCOS患者は正倍数性胚を戻しても継続妊娠率が低いことを示しています。いくつかのヒトおよび動物実験で、PCOS子宮内膜の脱落膜化が損なわれていることが示されています(Kim et al, 2000, Piltonen et al, 2015, Savaris et al, 2011)。 
ヒトPCOS子宮内膜の遺伝子発現解析では、プロゲステロン抵抗性が認められ(Kim et al, 2000, Savaris et al, 2011)、ステロイド受容体シグナルとインスリン抵抗性などの内分泌障害との関連性の可能性が示唆されています(Fornes et al, 2010, Li et al, 2015)。 
この論文では黄体補充はプロゲステロン筋注で実施しており、血中プロゲステロン濃度は維持されているので、プロゲステロン濃度に依存しない妊娠を阻害する因子があるのだと思います。以前紹介した論文同様、PCOS患者での受精率低下や胚異数性は上昇していません。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

# 体重、BMI

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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