一般不妊

2021.12.10

細菌性腟症は不妊の原因なの?(Am J Obstet Gynecol. 2021)

はじめに

生殖可能年齢の女性の腟内細菌叢には、好気性細菌、通性嫌気性細菌、および偏性嫌気性細菌が含まれています。最適な腟内細菌叢は、共生的に存在する傾向があり、乳酸や抗菌性副産物の産生や低レベルの免疫系の活性化によって、病原性細菌のコロニー形成や感染から保護していると考えられています。乳酸菌の優位性が崩れると、細菌性病原体や他の嫌気性細菌が上昇することで、性感染症(STI)や上部生殖器感染症のリスクが高まることが示されています。 

ポイント

細菌性腟症は乳酸菌の優位性が崩れた状態で、卵管性不妊や性感染症のリスク増加と関連します。無症状のことが多く、抗生物質治療が有効ですが再発率が高いため、ラクトバチルス・クリスパタスを含むプロバイオティクスの併用などが検討されています。 

引用文献

Jacques Ravel, et al. Am J Obstet Gynecol. 2021. DOI: 10.1016/j.ajog.2020.10.019 

論文内容

①細菌性腟症とは 
細菌性腟症は、乳酸産生菌の割合が減少し嫌気性菌の割合が増加し、最適な腟内細菌叢が壊れてしまった状態を示します。関連菌としては、Gardnerella vaginalis、Megasphaera spp.、Atopobium vaginae、Dialister spp.、Mobiluncus spp.、Sneathia amnii、Sneathia sanguinegens、Porphyromonas spp.、Prevotella spp.などが挙げられます。 
細菌性腟症は無症状のことが多いのですが、腟の臭い、痒み、異常分泌物などを訴えることもあります。不妊症、周産期合併症の増加、性感染症や子宮内膜炎を含む骨盤内炎症性疾患(PID)のリスク増加と関連しています。 
診断基準(下記のうち、3項目以上陽性) 
・灰色帯下 
・腟内pH>4.5 
・アミン臭の検出(採取腟内容に10%KOHを加えるとアミン臭、魚臭を呈する) 
・顕微鏡でclue cellの存在 

②細菌性腟症の治療法 
症状のある細菌性腟症の患者は、経口または腟内抗生物質で治療します。 
2020年ACOGの推奨では、メトロニダゾールの経口投与、メトロニダゾールの腟内ゲル、クリンダマイシンの腟内クリームなどを推奨しています。単回投与の経口セクニダゾールは7日間の経口メトロニダゾールと同等の治療効果があると報告されています。治療法の選択は、患者の好み、コスト、利便性、アドヒアランス、使いやすさ、治療既往によって検討していきます。治療後3〜4週間の治療効果は高いものの、細菌性腟症の再発率は高く、58%の女性が1年以内に再発しています。 
症状のない細菌性腟症(Nugentスコアが4〜10)はかなりの女性が罹患していると考えられていますが、セクニダゾールのような投与頻度の少ない抗生物質投与や再発予防のためにラクトバチルス・クリスパタスを含むプロバイオティクスを組み合わせた治療などが提唱されています。 

③細菌性腟症と不妊の関係 
クラミジア抗体陽性症例や細菌性腟症症例では、卵管性不妊と強く関連していることがわかっています。不妊女性の検体を調べると、卵管性不妊女性では31.5%と非卵管性不妊女性の19.7%より細菌性腟症を認めました。それ以外にも、原因不明不妊は細菌性腟症に関連する細菌を含む独特の腟内細菌叢を有しているという報告もあり、不妊症と細菌性腟症は比較的関連があると考えられていることが多いです。最近では、体外受精不成功の女性では異常な腟内細菌叢を有している可能性が指摘されています。しかし、現在のところ体外受精を対象とした12件のメタアナリシスでは、細菌性腟症は出生率(相対リスク[RR]、1.47;95%CI、0.96-1.57)や臨床妊娠率(RR、0.93;95%CI、0.75-1.15)に有意な影響を与えないとされています。 

④細菌性腟症と不妊のメカニズム 
細菌性腟症女性の不妊を誘発するメカニズムは明確にはわかっていませんが、様々な仮説が提案されています。 
1つめの仮説は、細菌性腟症の微生物群の炎症誘導による可能性です。樹状細胞による免疫活性化や炎症性サイトカインの増加を誘発し、腟粘膜に炎症を引き起こすことがわかっています。これらにより精子が免疫応答の対象になってしまう可能性もあり、これらが不妊原因になり得ると考えられます。 
もう一つの仮説は、シアリダーゼやムチナーゼが子宮頸管粘液の状態に影響を与えることです。子宮頸管粘液の主な機能は、微生物の侵入から上部生殖管を保護することですが、微生物はムチンを分解できるムチナーゼを含む様々な分解酵素を産生できるため、これらにより上部生殖管への細菌コロニー形成を促進すると考えられています。 
細菌性腟症女性は、性感染症リスクが高まるとされています。細菌性腟症はクラミジア、淋菌に対する罹患率をそれぞれ3.4倍および4.1倍増加させることが報告されています。Lactobacillus inersではなく、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus jenseniiが産生するD-乳酸は、頸部腟上皮の機能に直接影響を与えることにより、in vitroでC trachomatisの感染を予防することが示されています。また、細菌性腟症は骨盤内感染症のリスクを高め、不妊症との関連が指摘されています。 
急性子宮内膜炎の女性は、典型的な比率の乳酸菌を持っている割合が90%低く、細菌性腟症関連細菌を持っている割合が2.4倍高いとされています。 

私見

当院でも適宜、細菌性腟症の検査は行っており、主にNugent Scoreで評価しています。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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