一般不妊

2022.03.26

子宮内膜症があると女性生殖器フローラは変化する?(Reprod Med Biol. 2022)

はじめに

子宮内フローラ(マイクロバイオーム)が妊娠率に影響を与えると最近話題によくあがってきます。ただ、子宮内フローラは年齢、食生活、民族などの影響を受けますし、ダイナミックに変化していると考えられているため、生殖結果に直結することを強く示した報告は数多くありません。
しかし、女性生殖器のマイクロバイオームが変化することにより様々な女性生殖器の症状・疾患を引き起こしている可能性は否定できません。
子宮内膜症の女性は、子宮内膜生検、子宮卵管造影、採卵後に、卵巣膿瘍や卵管膿瘍、骨盤内炎症性疾患を発症することがあります。もしかすると内膜症性嚢胞があると女性生殖器のマイクロバイオームが大きく変化しているのでは?という仮説にしたがって検証した国内からの報告をご紹介します。 

ポイント

子宮内膜症女性では腟や子宮内膜フローラが異常となっている可能性があり、広域抗菌薬による治療で慢性子宮内膜炎を改善させることで生殖医療成績が向上する可能性が示唆されます。 

引用文献

Sugiko Oishi, et al. Reprod Med Biol. 2022. DOI:10.1002/rmb2.12441 

論文内容

2019年7月から2020年4月までに三重大学と琉球大学で卵巣腫瘍の腹腔鏡手術を受けた女性36名(子宮内膜症女性:18名、子宮内膜症でない女性:18名)を対象とした国内で行われた前向きコホート研究です。手術中に腟分泌液、子宮内膜液、腹膜液、卵巣囊胞液を採取し、細菌16S rRNAの次世代シークエンシングを行い、マイクロバイオームを解析しました。 

結果 

子宮内膜症の有無にかかわらず、腹膜液、卵巣囊胞液のいずれにも特異的な微生物群は検出されませんでした。腟内の感染性細菌量のカットオフ値を64.3%としたところ、子宮内膜症群では感染性細菌量が増加していました(p=0.01)。子宮内膜の感染性細菌数のカットオフ値を18.6%としたところ、子宮内膜症例で感染性細菌量が増加していました(p=0.02)。
腹腔液や卵巣囊胞液はほぼ無菌状態ですが、子宮内膜症女性では腟や子宮内膜フローラが異常となっている可能性が考えられます。 

私見

子宮内膜症女性では腟や子宮内膜フローラが異常となっているのであれば、広域抗菌薬を用いて治療することにより慢性子宮内膜炎などを改善させ、生殖医療成績を改善させる可能性が考えられます。子宮内膜症があるから慢性子宮内膜炎は起こっても仕方ない、抗生剤は効かないという議論は成り立たない可能性があります。この論文を読んで内膜症がある患者様の慢性子宮内膜炎もしっかり治療対象となると考えさせられました。
この報告は2022年ですが、その後、子宮内膜症の発症に微生物の関与が示唆されており、特にFusobacterium nucleatumという嫌気性グラム陰性菌が注目されています。
ただ、否定的な意見もあり、今後注視していきたい部分でもあります。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# クラミジア、性感染症

# 子宮内細菌叢検査

# 子宮内膜症

# 慢性子宮内膜炎

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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