はじめに
男性患者も抗うつ薬を内服されている方が一定数おり、SSRIは精液所見に悪影響を与えることがわかっています。セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)も頻繁に使用される薬剤ですが、現在まで人での報告はほぼありません。
そのなかの一つのデュロキセチン塩酸塩(サインバルタ®)の精液所見・精子DNA断片化率・血清ホルモン値に対する影響を調べた報告をご紹介いたします。
ポイント
デュロキセチン塩酸塩(サインバルタ®)は精液所見・精子DNA断片化率・血清ホルモン値に影響を与えない可能性が高いです。
引用文献
Punjani N, et al. Andrologia. 2021. DOI: 10.1111/and.14207.
論文内容
18~65歳の健康男性68名にデュロキセチン60mgまたはプラセボを6週間(5週間フル投与、1週間漸減)投与する二重盲検プラセボ対照無作為化臨床試験です。評価項目は、デュロキセチン投与中(2週間、6週間)および投与中止後(8週間、10週間)のDNA断片化異常、精液所見、ホルモン変化としました。
結果
デュロキセチン群は、プラセボ群と比較して治療中(p = 0.09)および治療後(p = 0.56)、精子DNA断片化異常(25%以上)と関連しておらず、精子DNA断片化率中央値は治療中にも増加しませんでした。精液所見、ホルモン値にもほとんど変化が認められませんでした。
私見
SNRIの男性不妊への影響を調査したのは、マウスでのアモキサピン(アモキサン®)とベンラファキシン塩酸塩(イフェクサーSR®)をビタミンC投与群と比較した報告のみで、この報告でもイフェクサーSR®群は精液所見の増悪を認めていません(Ladan Bandegi, et al. Int J Reprod Biomed. 2018)。
今後、不妊治療中の男性にはSNRIを選択されることが一般的になってくるのでしょうか。精液検査を希望された男性の内服薬の問診、心療内科・精神科の先生方との連携の重要さを改めて感じました。
現在SNRI以外の抗うつ剤を服用されている方も、うつ症状が安定していることが何よりも大事ですので、自己判断での薬の中止は決して行わず、薬の選択は医師と相談の上、慎重な決定が必要です。
文責:川井清考(WFC group CEO)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。