治療予後・その他

2022.05.26

子宮頸がんの妊孕性温存手術を受けた女性の不妊/出産リスク(Fertil Steril. 2016:その2)

はじめに

子宮頸がんの妊孕性温存手術を受けた女性FSS 2,777名(その後の妊娠944名を含む)を対象としたシステマティックレビューの続きです。「子宮頸がんの妊孕性温存手術を受けた女性の不妊/出産リスク(Fertil Steril. 2016:その1)」では不妊症について触れましたが、こちらでは再発率と周産期合併症について触れたいと思います。 
 

ポイント

  • 手術方法による出産に至った割合に差は認めませんでした。 
  • 早産率は経腹的広汎子宮頸部摘出術後が高い傾向にありました。 
  • 妊娠中の合併症は絨毛膜羊膜炎が原因と考えられる前期破水、それに伴う早産が増加します。 
  • 早産の予防的処置は一定のコンセンサスが得られていません。 

引用文献

Enrica Bentivegna, et al. Fertil Steril. 2016. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2016.06.032 

論文内容

再発率:
子宮頸がんの妊孕性温存手術の再発数は116件(円錐切除術または単純頸部摘出術:4件、経腟的広汎子宮頸部摘出術後:52件、経腹的広汎子宮頸部摘出術後:28件、低侵襲手術による広汎子宮頸部摘出術後:15件、術前補助化学療法後:7件)でした。子宮頸がんの妊孕性温存手術後の妊娠に至った割合、出産に至った割合、早産率はそれぞれ55%、70%、38%でした。手術による出産率に差は認めませんでした。早産率は経腹的広汎子宮頸部摘出術後が高い傾向にありました。 

妊娠中合併症
子宮頸がんの妊孕性温存手術後に妊娠した場合はハイリスク妊娠となります。早産率は、妊孕性温存手術の方法によって39-57%でした。経腹的広汎子宮頸部摘出術を受けた患者で早産率は高いですが、出産率には差がありませんでした。
どのような方法をとったとしても、胎児死亡は発生しています。原因として、おそらく子宮頸管の長さの短縮に関連していると考えられています。妊娠中期の早産には前期破水も関連していて、原因の大部分は潜在性もしくは臨床的な絨毛膜羊膜炎と報告されています。このリスクを減少させることを目的としたいくつかの処置や予防措置が報告されています。
その一つは頸部の縫縮術です。もともと頚部を摘出している例が多いのでさまざまな方法で子宮入口を縫縮することにより早産率を下げることができないか検討されています。妊娠中の定期的な超音波検査で切迫早産徴候を探りながら処置を考えるという方法も提案されています。
早産率を減らすために定期的な腟内pH測定、プロゲステロン腟剤の適用、細菌性腟炎に対するNugentスコアの測定、予防的抗生物質、ステロイド治療なども提案されていますが、標準化治療には至っていません。
経腟分娩後の大量出血などを予防するために、帝王切開は推奨されています。 

私見

初期の子宮頸がんでは、円錐切除もしくは単純子宮頸部摘出術が行われていますが、他の術式にくらべて頸管狭窄などの術後合併症は少なく、頚管性不妊となるリスクは少ないとされています。定期的な子宮頸がん検診、HPVワクチン接種などを中長期的に啓発していく必要があると思います。
また、既に子宮頸がんの妊孕性温存手術を受けた女性に関しては、産婦人科腫瘍施設、生殖医療施設、高度周産期施設が連携をとりながら治療にあたることが大事であると思います。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# がんと生殖医療

# 妊孕性温存

# 周産期合併症

# ハイリスク妊娠

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

母乳を通じたSSRI曝露と小児の認知機能(JAMA Network Open. 2025)

2026.01.07

帝王切開既往と出産回数が子宮破裂リスクに与える影響(Am J Obstet Gynecol. 2025)

2026.01.06

妊娠期ビタミンD補充による子どもの骨密度長期改善効果:MAVIDOS研究の追跡調査(Am J Clin Nutr. 2024)

2026.01.05

妊娠中ビタミンD補充が新生児骨健康に及ぼす影響:MAVIDOS研究(Lancet Diabetes Endocrinol. 2016)

2025.12.29

治療予後・その他の人気記事

妊娠高血圧腎症予防のアスピリン投与について(AJOG2023 Clinical Opinion)

自然妊娠と体外受精妊娠、どっちが流産多いの?

妊娠中メトホルミン使用は児神経予後と関連しない(Am J Obstet Gynecol. 2024)

反復着床不全・反復流産におけるタクロリムス治療の周産期予後(Am J Reprod Immunol. 2019)

帝王切開既往と出産回数が子宮破裂リスクに与える影響(Am J Obstet Gynecol. 2025)

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

2025.11.10

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

自然周期採卵における採卵時適正卵胞サイズ(Frontiers in Endocrinology. 2022)

2025.03.25