一般不妊

2022.06.01

慢性子宮内膜炎と子宮内膜ポリープ(Diagnostics (Basel). 2021)

はじめに

慢性子宮内膜炎と子宮内膜ポリープは、不妊女性に多く見られる疾患です。慢性子宮内膜炎は子宮内膜の感染などを契機に、子宮鏡検査や組織学的検査で慢性炎症の徴候が認められることにより診断されます。子宮内膜ポリープは、子宮内膜から腺、間質、血管を含む組織が異常に増殖し内膜組織が肉眼的に突出した状態をさします。慢性子宮内膜炎と子宮内膜ポリープの関連性を調査したメタアナリシスです。

ポイント

  • 子宮内膜ポリープを持つ生殖年齢女性はCD138陽性慢性子宮内膜炎頻度が高くなります。 
  • 慢性子宮内膜炎リスクは、内膜ポリープがない女性に比べて内膜ポリープがある女性で高くなります。 
  • 内膜ポリープ数が1つより3つ以上で慢性子宮内膜炎リスクが高くなります。 
  • 慢性子宮内膜炎と子宮内膜ポリープは関連性が高く、共通の病的過程の結果である可能性が高いが決定的な根拠には至っていません。

引用文献

Amerigo Vitagliano, et al. Diagnostics (Basel). 2021. DOI: 10.3390/diagnostics11122182 

論文内容

電子データベースの検索により、開始時から2021年9月までの観察研究から閉経前女性の慢性子宮内膜炎と子宮内膜ポリープの関連性を調査した論文を比較検討したシステマティックレビュー・メタアナリシスです。統計解析は、MedCalc 16.4.3(Ostend, Belgium)およびReview Manager version 5.3(Nordic Cochrane Centre, Cochrane Collaboration)を用いて実施しました。主要評価項目は、子宮内膜ポリープを有する女性における慢性子宮内膜炎の有病率を評価することです。副次評価項目は、子宮内膜ポリープのうちCD-138陽性子宮内膜ポリープの有病率を明らかにすること、子宮内膜ポリープを有する女性とポリープのない女性における慢性子宮内膜炎の有病率を比較すること、単一の子宮内膜ポリープを有する女性と複数の子宮内膜ポリープを有する女性における慢性子宮内膜炎の有病率を比較することとしました。 

結果

8件の観察研究(n=3,225名)が対象となり、子宮内膜ポリープを有する女性における慢性子宮内膜炎の有病率は51.35%(95%CI、27.24-75.13%)でした。子宮内膜ポリープのうちCD-138陽性子宮内膜ポリープの割合は70.73%(95%CI、55.73-83.68%)でした。 
子宮内膜ポリープを有する女性は、子宮内膜ポリープのない女性に比べて慢性子宮内膜炎の有病率が高くなりました(OR 3.07、95%CI 1.59-5.95)。子宮内膜ポリープが3つ以上ある女性は、子宮内膜ポリープが1つの女性よりも慢性子宮内膜炎の有病率が高くなりました(OR 3.43、95%CI 1.52-7.73)。 

私見

慢性子宮内膜炎は臨床的に無症状であっても、原因不明不妊・不育症・反復着床不全の原因になるとされています。子宮内膜ポリープと慢性子宮内膜炎に共通の病的プロセスがあるという考えは2013年にCarvalhoらによって仮説が立てられました。慢性子宮内膜炎における血管変化の70%は血管壁のヒアルロン酸が肥厚しており、子宮内膜ポリープの血管像と類似した形態となっています。また、血管壁の血栓やフィブリノイド変性を伴うことも共通しています。慢性子宮内膜炎の原因菌として、腸球菌、連鎖球菌、ブドウ球菌、マイコプラズマ属、Gardnerella vaginalis、ウレアプラズマ、クラミジアトラコマティス、淋菌が考えられています。性感染症・細菌性腟炎をしっかり管理することが大事なのかもしれません。 

生殖医療ガイドライン2025では、このような表記となっています。 
CQ41 子宮鏡検査は反復着床不全もしくは慢性子宮内膜炎における妊娠成績改善に有効か? 

  1. RIF患者において超音波断層法で異常を認めない患者にルーチンで外来子宮鏡検査を実施しても、IVFにおける妊娠成績を改善させる効果は認められない。(B) 
  2. 子宮鏡検査実施により子宮腔に病変が認められる場合に、その病変に対する治療を行うとIVFの治療成績が改善される患者・状況が認められる。(C) 
  3. ARTに先立つCE治療のために診断目的の子宮鏡検査を実施することにより継続妊娠率、出生率が改善したとの報告も認められるが、その効果は、まだ断定できない。子宮鏡検査は診断オプションの1つとして考慮される。(C) 

      文責:川井清考(WFC group CEO)

      お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

      # 子宮内膜ポリープ

      # 慢性子宮内膜炎

      # 総説、RCT、メタアナリシス

      WFC group CEO

      川井 清考

      WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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