治療予後・その他

2022.07.13

乳がんサバイバーの妊娠への影響(J Clin Oncol. 2021)

はじめに

乳がんサバイバーの治療後の妊娠は、生殖医療結果や母体の安全性の面で有害な影響を及ぼす可能性があります。乳がんサバイバーの妊娠に対する生殖医療結果や母体の安全面を検討したシステマティックレビュー&メタアナリシスです。

ポイント

乳がんサバイバーは一般女性と比較して、その後の妊娠の可能性が低下していました。帝王切開、低出生体重児、早産、SGA児リスクが、特に化学療法既往の乳がんサバイバーにおいて増加しました。

引用文献

Matteo Lambertini, et al. J Clin Oncol. 2021. DOI: 10.1200/JCO.21.00535

論文内容

検索条件と一致した6,462件の報告のうち、39件の報告(一般女性8,093,401名と乳がん患者112,840名の7,505名妊娠)を対象としました。
乳がんサバイバーは一般女性と比較して、その後の妊娠の可能性が低下していました(相対リスク、0.40; 95%CI、0.32〜0.49)。

結果

帝王切開(OR、1.14; 95%CI、1.04〜1.25)、低出生体重児(OR、1.50; 95%CI、1.31〜1.73)、早産(OR、1.45; 95%CI、1.11〜1.88)、SGA児(OR、1.16; 95%CI、1.01〜1.33)のリスクは、一般女性と比較して、化学療法既往の乳がんサバイバーにおいて増加しました。先天性異常やその他の周産期合併症リスクは変わりませんでした。
その後、妊娠しなかった乳がんサバイバーと比較して、妊娠した乳がんサバイバーは無病生存率(HR、0.66; 95%CI、0.49〜0.89)および全生存率(HR、0.56; 95%CI、0.45〜0.68)において良好でした。同様の結果は、患者背景、腫瘍種類、治療の特徴、妊娠の結果、および妊娠の時期に関係なく観察されました。

私見

論文に記載されている他の癌サバイバーの妊娠の可能性は下表のように報告されています。アップデートされた情報提供をしていきたいと思います。

癌診断後妊娠に影響を与える割合

診断RR (95% CI)
子宮頸がん0.33 (0.31 to 0.35)
乳がん0.40 (0.32 to 0.49)
白血病0.40 (0.27 to 0.58)
腎臓がん0.42 (0.18 to 0.99)
脳腫瘍0.52 (0.39 to 0.69)
骨腫瘍0.56 (0.37 to 0.86)
卵巣腫瘍0.56 (0.48 to 0.65)
ホジキンリンパ腫0.62 (0.47 to 0.82)
全てのがん0.65 (0.55 to 0.77)
肝がん0.65 (0.19 to 2.26)
非ホジキンリンパ腫0.66 (0.53 to 0.82)
大腸癌0.70 (0.41 to 1.17)
甲状腺癌0.82 (0.65 to 1.03)
皮膚癌0.97 (0.87 to 1.09)

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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# 出生児予後

# 総説、RCT、メタアナリシス

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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