はじめに
GnRHアンタゴニスト法は調節卵巣刺激の標準的治療となっています。前周期にホルモン剤を投与するか、GnRHアンタゴニストを投与する時期を卵胞やホルモン値から決定するか、どのGnRHアンタゴニスト薬剤を使うかなど、様々な治療選択が起こり得ます。患者様に適したオーダーメイド処方をしていくべきことだと思いますが、2023年時点でのmeta-analysisをご紹介いたします。
ポイント
新鮮胚移植を検討する場合、ホルモン前処置なしのDay 5/6 fixed法を第一選択することが継続妊娠率に寄与すると考えられています。ただし、症例ごとに治療選択を検討することが何より大事だと考えます。
引用文献
C A Venetis, et al. Hum Reprod Update. 2023 Jan 3;dmac040. doi: 10.1093/humupd/dmac040.
論文内容
GnRHアンタゴニスト法の治療オプション(①Day 5/6 fixed法 vs. flexible法、②Cetrorelix vs. Ganirelix、③ホルモン前処置 あり vs. なし)についてのPairwise meta-analysisおよびnetwork meta-analysisです。
Embase(Ovid)、MEDLINE(Ovid)、Cochrane Central Register of Trials(CENTRAL)、SCOPUS、Web of Science(WOS)を用いて、2021年11月23日までに英語で書かれた下記キーワード(GnRH antagonist; assisted reproduction treatment; randomized controlled trial (RCT))で検索される論文を研究対象としました。
結果
6,738件の報告のうち、102件をシステマティックレビューに、73件をメタアナリシスに用いました。
- Day 5/6 fixed法 vs. flexible法
1件 Day 5 fixed法 vs. flexible法
6件 Day 6 fixed法 vs. flexible法
Day 6 fixed法がflexible法より高い妊娠継続率を示しました。
Pairwise meta-analysis(RR 0.76, 95% CI 0.62~0.94, I2 = 0%; 6RCT;n = 907) - Cetrorelix vs. Ganirelix
データ不十分で評価できず。 - ホルモン前処置 あり vs. なし
ホルモン前処置ありは、ない場合に比べて低い妊娠継続率を示しました。
network meta-analysis
(RR 0.79, 95% CI 0.69~0.92, I2=0%;5RCT; n=1318)
Fixed法に限定しても同様の結果でした。
network meta-analysis
(RR 0.84, 95%CI 0.71~0.99)
SUCRAスコアは、ホルモン前処置なしのDay 5/6 fixed法が最も高い妊娠継続率を示しました(84%)。
私見
Day 5/6 fixed法 vs. flexible法のfixed法の優位性は子宮内膜胚受容能に限ったことなのか、卵子の過熟によるものなのか不明な部分がまだまだあります。
Cetrorelix vs. Ganirelixについては薬物動態が異なるので臨床差がでてもおかしくないですが、出生率を比較した報告(Kars B, et al. Fertil Steril 2007)が、一本あるに留まり、現在のところ差がないことになっています。
ホルモン前処置については現在のところ、内膜胚受容能との関係ではないかとされていますが、凍結融解胚移植でも影響があるという報告(Wei D, et al. Hum Reprod. 2017)もあります。まだまだ真偽は不明です。
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文責:川井清考(WFC group CEO)
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