体外受精

2026.03.04

PCOS女性におけるIVF前経腟的卵巣穿刺術の有用性(J Assist Reprod Genet. 2026)

はじめに

経腟的卵巣穿刺術(TVOD)は腹腔鏡下卵巣開孔術(LOD)の低侵襲代替法として報告され、アンドロゲン値と排卵機能を改善することが示されています。本研究では、PCOS患者においてTVODがIVF・PGT-A後の正倍数性胚率に与える影響を評価しました。

ポイント

PCOS女性において、2回目体外受精前にTVODを実施すると、対照群と比較して移植可能胚数が有意に増加し、生殖予後が改善しました。

引用文献

Moses Bibi, et al. J Assist Reprod Genet. 2026. doi: 10.1007/s10815-025-03778-x.

論文内容

本研究の目的は、PCOS患者における反復IVFの前にTVODを実施した場合の正倍数性胚率への影響を評価することです。
2017年1月から2024年12月の間に単一施設で実施された後方視的コホート研究です。ロッテルダム基準によってPCOSと診断され、2回目体外受精前にTVODを受け、初回と反復サイクルの両方でPGT-Aを実施した全患者を対象とし、適合した対照群と比較しました。主要評価項目は周期あたりの移植可能胚数でした。副次評価項目には胚盤胞数、正倍数性胚数、異数性胚率が含まれました。卵巣刺激はピルロング法で行っています。
18名の被験者がTVOD群の基準を満たし、57名の対照被験者と比較されました。TVOD群と対照群の平均年齢はそれぞれ35.3±4.6歳、36.5±4.4歳でした(p=0.34)。平均BMIはTVOD群29.7±6.0、対照群27.2±6.8でした(p=0.07)。平均AMH値はTVOD群5.6±2.6 ng/mL、対照群5.1±2.1 ng/mL(p=0.48)でした。
ゴナドトロピン総投与量についてです。TVOD群は対照群より初回・2回目サイクルとも有意に高い総ゴナドトロピン投与量を受けました。初回サイクル:TVOD群4241.2±1331.3 IU、対照群3318.7±1030.0 IU(p=0.009)。2回目サイクル:TVOD群4365.8±1279.0 IU、対照群3483.8±1221.6 IU(p=0.01)。しかし、サイクル間の総ゴナドトロピン投与量の変化はTVOD群124.59±1193.89 IU、対照群165.14±886.98 IU(p=0.89)で有意差はありませんでした。

結果

TVOD前後で採卵数に差はありませんでした(21.7±8.2 vs. 21.8±6.8、p=0.94)。TVOD後、2PN胚数が10.9±5.2から14.2±6.0へ増加しました(p=0.004)。胚盤胞数と胚盤胞率の両方が増加しました(3.0±2.1から6.9±4.8、p=0.002;28.9±18%から49.3±20.5%、p=0.004)。
正倍数性胚盤胞数は0.56±0.7から2.94±1.9に増加しました(p<0.001)。正倍数性胚盤胞率は20±33%から47.9±30%に増加しました(p=0.01)。モザイク胚盤胞数は0.16±0.4から1.7±2.1に増加しました(p=0.007)。移植可能胚(正倍数性胚とモザイク胚の合計)の割合は24±33%から73±28.3%に増加しました(p=0.002)。正倍数性胚とモザイク胚の合計数は0.72±0.8から4.7±3.1に増加しました(p<0.001)。異数性胚の割合は67.3±37%から18.5±27%に減少しました(p=0.002)。異数性胚数は2.2±2.0から1.2±1.6へ減少傾向を示しました(p=0.1)。
対照群では、初回と2回目のIVFサイクルを比較すると、採卵数が15.3±6から17.3±6.5へ増加傾向を示し(p=0.02)、2PN胚数が8.6±4.3から10.5±5へ増加しました(p=0.008)。胚盤胞数は2.4±1.9から4.2±3.2へ(p<0.001)、胚盤胞率は30±23%から39±24%へ増加しました(p=0.03)。正倍数性胚盤胞数と率も改善し、それぞれ0.33±0.48から1.6±1.7へ(p<0.001)、12.4±22%から31.3±28%に増加しました(p<0.001)。移植可能胚の獲得数と割合も0.72±0.9から2.2±2へ(p=0.001)、27±35%から46±36%に改善しました(p<0.001)。異数性胚の獲得数や割合には周期間で影響はありませんでした。

多変量回帰分析 

年齢、AMH、BMI、男性因子不妊、サイクル間の総ゴナドトロピン投与量変化を調整後も、TVODと移植可能胚および異数性胚の獲得率と率の相対的変化との関連は有意なままでした。対照群と比較して、TVODは移植可能胚獲得率を46%増加させ(RR=1.46 [1.15, 1.87]、p=0.0029)、移植可能胚率を16%増加させました(RR=1.16 [1.03, 1.32]、p=0.018)。TVODはまた異数性胚獲得率を19%減少させました(RR=0.81 [0.71, 0.92]、p=0.0022)。正倍数性胚獲得率の変化は増加傾向を示しましたが、統計学的有意には達しませんでした(RR=1.26 [0.97, 1.67]、p=0.097)。

私見

TVODの機序として、卵巣環境のアンドロゲン値低下による卵胞と顆粒膜細胞-卵子複合体の改善が示唆されています(Hendriks et al. Hum Reprod Update, 2007)。

TVOD手技 

プロポフォール麻酔下の外来手術センターで実施されています。17ゲージ、35cmの採卵針を170mmHgで持続吸引しながら使用しました。各卵巣を1回穿刺し、各卵巣につき100回穿通しました。重大な出血は認められませんでした。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 手術

# 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

# 着床前遺伝学的検査(PGT)

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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