Q.精索静脈瘤が再発した場合に、再手術は効果があるのでしょうか?
A.改善効果があるようです。
今回ご紹介する論文
Effect of redo varicocelectomy on semen parameters and pregnancy outcome: An original report and meta-analysis.
Mahdi M. et al., Andrologia, 54(10), e14525. https://doi.org/10.1111/and.14525
精索静脈瘤手術の再発例に対して再手術をした場合の精液検査所見と妊娠転帰に対する効果-独自のデータの解析とメタアナリシス
男性不妊症のもっとも多い原因の一つは、精索静脈瘤です。治療には、精索静脈瘤手術が必要と考えられており、手術が標準的な治療ですが、再発する場合があります。この研究は、再発に対してもう一度手術するメリットがあるかどうかを検証したものです。
研究の要旨
精索静脈瘤手術後の静脈瘤の再発をすることがありますが、この再発は、不妊治療で良い結果が出なかったり、精液検査所見の悪化が継続することにつながります。この研究は、精索静脈瘤の再発をきたした男性の生殖機能および妊娠転帰に対する精索静脈瘤手術の再手術の効果を評価することを目的として独自に行われました。さらに系統的なレビューおよびメタアナリシスも組み合わせて行われました。この後ろ向きの研究は、再発性の精索静脈瘤の患者に対して顕微鏡下精索静脈瘤手術を施行した32人の患者を対象としました。手術前後の精液検査所見およびホルモン値の変化を比較しました。Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analysesに従い、本研究者らの独自の研究に加えて、7つの論文を用いてメタアナリシスが行われました。オリジナルの研究の結果、精索静脈瘤手術の再手術により、精子濃度、精子前進運動率、総運動精子数、精子正常形態率が統計的に有意に改善されました。メタアナリシスの結果は、本研究者らの独自の研究での検討結果と同様で、精子濃度(平均差[MD]= +20.281 million/ml、p < 0.001)、全運動性(MD = +9.659%, p = 0.001)、全運動精子数(MD = +23.258 x10^6, p < 0.001)と精子正常形態率(MD = +4.460%, p < 0.001)で顕著に改善していました。妊娠の転帰は7つの研究で報告されており、妊娠率は34.6%でした。この研究者らの独自の研究報告でもメタアナリシスでも、ホルモン値の結果のいずれにも有意な変化は認められませんでした。
結論として、次のようになります。精索静脈瘤手術後の再発例に対しての再手術により男性の生殖機能に有意な改善がありました。症例ごとの臨床的な状態に応じて精索静脈瘤の再発症例にこの治療を提供することができます。
筆者の意見
男性不妊症の最も多い原因の一つである精索静脈瘤に対して、根治的な治療として顕微鏡下精索静脈瘤手術などの手術が一般的に行われています。手術方法によりますが、一定の頻度で再発が起こります。これはどんなベテランの医師が行っても避けられないことです。その場合、精液検査所見が悪くて妊娠が得られていなければやはり再手術が検討されます。今回の検討結果により、再手術をすることによって、精液検査所見の有意な改善が得られ、妊娠率も初回の精索静脈瘤手術での妊娠率の報告(33-42%)と同等の結果が得られています。再手術しなかった場合に妊娠率がどうなるかとの比較はありませんが、その場合は精液所見の改善はあまり望めないと思われます。再手術の際には不妊期間がさらに長くなるため、女性側の問題で体外受精となってしまうことも少なくないと思われますが、この結果から、再手術はひとつの重要なオプションとなると思われます。
文責:小宮顕(亀田総合病院 泌尿器科部長)
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