はじめに
切迫流産女性に対してプロゲステロン補充が出生率を改善するというのが大きな流れとなっています。それに対して、否定的な無作為化試験が出てきましたので、ご紹介いたします。
ポイント
妊娠10週未満の切迫流産女性において、妊娠12週までのプロゲステロン補充(腟剤400mg/日)は、出生率は増加しません。ただし、使用週数や対象女性が異なる可能性がありますので、状況に応じて判断することが重要です。
引用文献
Lucas A McLindon, et al. Hum Reprod. 2023 Feb 20;dead029. doi: 10.1093/humrep/dead029.
論文内容
2012年2月から2019年4月にオーストラリアの総合周産期施設で行われた無作為化二重盲検プラセボ対照試験です。妊娠10週未満で下腹部痛の有無に関わらず性器出血を認めた切迫流産女性を2群に無作為化し、介入群には400mgのプロゲステロン腟ペッサリー、対照群にはプラセボの腟ペッサリーを妊娠12週まで投与しました。主要評価項目は出生率としました。386名(各群193名)の女性を無作為化する予定でしたが、278人の女性を無作為化した後、無益性のため予定されていた中間解析で試験は中止されました。
結果
出生率は介入群で82.4%(112/136)、プラセボ群で84.2%(112/133)でした(RR 0.98、95% CI 0.88-1.09; リスク差 0.02、95% CI 0.11-0.07; P=0.683)。1回以上の流産既往女性での出生率は介入群で80.6%(54/67)、プラセボ群で84.4%(65/77)でした(RR 0.95、95% CI 0.82-1.11; P=0.550)。流産既往が2回(RR 1.28、95% CI 0.96-1.72; P=0.096)、それ以上(RR 0.79、95% CI 0.53-1.19; P=0.267)の女性でも、プロゲステロンの有意な効果は認めませんでした。早産率は介入群で12.9%、プラセボ群で9.3%でした(RR 1.38; 95% CI 0.69-2.78; P=0.361)。出生時体重の中央値は介入群で3310g、プラセボ群で3300gでした(P=0.992)。他の周産期合併症などにも差を認めませんでした。
私見
当対象女性は単胎妊娠、体外受精治療患者は除かれています。またHFEAでは16週までのプロゲステロン投与が推奨されていますが、当報告では12週までの投与にとどまっています。不育症での治療は症例ごとに異なりすぎて無作為化試験では治療奏功率にどうしても差がなくなる傾向にあるのではと懸念しています。患者様に応じて個別化提案をすべき事項だと考えています。
流産予防にプロゲステロンが効果的と示している最近の論文・メタアナリシスは下記の2本ですが記載されているのは同じグループです。ブログでも複数回取り扱っています。
- Devall AJ, et al. Cochrane Database Syst Rev 2021
- Coomarasamy A, et al. N Engl J Med 2019
流産予防に関するコラムもご参照ください
- 不育症予防のためのEBMに基づいた介入(Lancet. 2021)
- 妊娠初期の性器出血と周産期合併症(Lancet. 2021)
- 妊娠初期に出血した女性の流産予防(Lancet. 2021)
- 流産歴がある妊娠初期の性器出血には黄体ホルモン腟剤(BMJ. 2021)
- 流産予防に経口プロゲステロン製剤は効くの?(Hum Reprod. 2020)
- 着床前検査(PGT-A)は不育症患者の出生率を改善できる(Hum Reprod. 2021)
- 反復流産患者が早産になりやすい?( Fertil Steril. 2022.)
文責:川井清考(WFC group CEO)
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