治療予後・その他

2023.06.16

ノンメディカル卵子凍結について知っておきたい情報

はじめに

日本産科婦人科学会は、ノンメディカル卵子凍結に関する考え方を下記のように記載しています。

  • あくまでも当事者の選択に委ねられる事項である。
  • 推奨も否定もしない(本会は、多くの女性がノンメディカルな卵子凍結について心配しないで済む社会環境が実現することを切望しています)。
  • 本会は、当事者女性、社会に対して正確な情報提供(動画)を行うことが必須。
  • 本会は、希望者は本会の動画を視聴し、その内容を理解・納得して行うかどうかの決定をすることを推奨する。
  • 卵子などの保存が、本会生殖補助医療登録施設と関係なく希望者と会社の契約というような形で行われ、医療者の手から離れる可能性があることについて十分に検討する必要がある。

卵子凍結についての2022年レビューから説明に使えそうな内容を列挙してみました。

ポイント

ノンメディカル卵子凍結は37.5歳未満での実施が費用対効果に優れており、生児出生を目指すには年齢に応じた十分な卵子数の確保が重要です。

引用文献

Zachary Walker, et al. Reprod Biol Endocrinol. 2022 Jan 7;20(1):10. doi: 10.1186/s12958-021-00884-0.

まとめ

(1)女性年齢37.5歳未満またはAMH 1.995ng/dL以上の女性において、良好な結果が期待できます。アメリカ生殖医学会が2021年に発表した計画的卵子凍結のガイドラインでは、適切なカウンセリングを行ったうえで卵子凍結を検討することを支持しています。 

(2)卵子採取時の年齢による影響 

  • Fuchs Weizman N, et al. BJOG An Int J Obstet Gynaecol. 2021  
    43研究のメタアナリシス 35歳での卵子凍結が費用対効果良好(最低60%の利用率を想定) 
  • Mesen TB, et al. Fertil Steril. 2015  
    37歳での卵子凍結が費用対効果良好 
  • Devine K, et al. Fertil Steril. 2015  
    社会的卵子凍結を1.2周期(35歳:平均16個MII卵子)行って40歳挙児希望がある場合、35-38歳なら社会的卵子凍結をしておいた方が、費用対効果がよく、38-40歳なら費用対効果がよいと推測されました。 

(3)生児出生を期待するために、何個の卵子を凍結するべき? アメリカ生殖医学会は理想的な卵子凍結個数を推奨する根拠はまだまだ不十分としていますが、下記のような報告があるようです。

  • Doyle JO, et al. Fertil Steril. 2016  
    70%の確率で生児出生を達成する個数 30〜34歳:14個MII卵子 3537歳:15個MII卵子 38〜40歳:26個MII卵子 
  • Cobo A, et al. Hum Reprod. 2018  
    35歳以下:24個MII卵子で累積着床率94.4%[95% CI = 84.3-100.4]となりプラトー 
  • Goldman RH, et al. Hum Reprod. 2017  
    75%の確率で生児出生を達成する個数 34歳:10個MII卵子 37歳:20個MII卵子 42歳:61個MII卵子 
  • Nagy ZP, et al. Reprod Biol Endocrinol. 2017  
    35歳未満:38.8個MII卵子 35歳以上:77個MII卵子 (35歳未満24名の女性の融解した卵子194個、35歳以上26名の女性の融解した卵子231個からの出生数より換算) 
  • Cobo A, et al. Hum Reprod. 2018  
    2007年から2018年までに、凍結卵子の利用率は4%から22%に増加しています。 
  • Leung AQ, et al. Reprod BioMed Online. 2021  
    14年間の追跡で7.4%の利用率 
  • Fuchs Weizman N, et al. BJOG An Int J Obstet Gynaecol. 2021  
    システマティックレビューでは、12〜15%の凍結卵子が22〜58ヶ月後に利用されていました。 
  • Wafi A, et al. Reprod BioMed Online. 2020  
    卵子凍結を行った女性の65%が将来的に卵子を使用すると考えていて、98%の回答者が他の人にも勧めたいとしています。 

(4)周産期合併症・新生児予後について 限定的データですが、周産期合併症・新生児予後に差がないとしています。

  • Garcia-Velasco JA, et al. Fertil Steril. 2013  
  • Chamayou S, et al. J Assist Reprod Genet. 2017  
  • Anzola AB, et al. J Assist Reprod Genet. 2015  
  • Noyes N, et al. Reprod BioMed Online. 2009  
  • Siano L, et al. Conn Med. 2013 

アメリカ生殖医学会の卵子凍結のガイドライン  
Evidence-based outcomes after oocyte cryopreservation for donor oocyte in vitro fertilization and planned oocyte cryopreservation: a guideline. Fertil Steril. 2021;116(1):36–47 

私見

ノンメディカル卵子凍結は、女性のライフプランニングにおける選択肢の一つとして重要です。費用対効果や卵子の利用率を考えると、37歳以前、できれば35歳以前の実施が望ましそうです。また、十分な卵子数を確保するには複数回の採卵が必要となることも少なくありません。当事者が正確な情報を理解した上で意思決定できるよう、医療者として適切なカウンセリングを提供することが我々の責務であると考えます。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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