はじめに
女性の10代での妊娠は、早産、低出生体重児、SGA児、低アプガースコア、新生児死亡率など、周産期合併症が多いことが報告されています。男性の若年齢に関する論文はあまり多くありませんが、2008年に報告された男性年齢別に周産期合併症を比較した研究をご紹介します。
ポイント
米国のデータでは、男性パートナーが10代で妊娠した20~29歳女性の周産期合併症リスクは増加することが示されています。
引用文献
Xi-Kuan Chen, et al. Hum Reprod. 2008 Jun;23(6):1290-6. doi: 10.1093/humrep/dem403.
論文内容
1995年から2000年にかけて、米国で20~29歳の既婚の経産婦から出生した2,614,966例の単胎児を対象に、レトロスペクティブ・コホート研究を実施しました。
出生時の有害事象に対する父親年齢のリスクを推定するため、多重ロジスティック回帰分析を行いました。男性年齢は以下に分類されました:20歳未満、20~29歳、30~34歳、35~39歳、40~44歳、45~49歳、50歳以上。
評価した出生児有害事象は、32週未満の早産、37週未満の早産、超低出生体重児(出生時体重1,500g未満)、低出生体重児(出生時体重2,500g未満)としました。
結果
20~29歳の父親から出生した新生児と比較すると、20歳未満の父親から出生した新生児では以下のリスク増加が認められました:
- 早産(OR 1.15、95%CI 1.10-1.20)
- 低出生体重児(OR 1.13、95%CI 1.08-1.19)
- 超低出生体重児(OR 1.17、95%CI 1.13-1.22)
- 低アプガースコア(OR 1.13、95%CI 1.01-1.27)
- 新生児死亡(OR 1.22、95%CI 1.01-1.49 および OR 1.41、95%CI 1.09-1.82)
私見
男性が10代での妊娠・出産に伴う周産期リスクの増大については、十分に認識されていないのが現状です。報告が少ないこと、生物学的な理由(精子の質など)によるものか、あるいは社会学的背景(家庭環境や違法薬物、喫煙、飲酒などの生活様式)によるものかは不明です。
近年、がん・生殖医療の分野でも若年男性の精子を扱う機会が増えています。今後、他の研究グループからの報告が出てくるかどうか、注目していきたいと思います。
文責:川井清考(WFC group CEO)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。