体外受精

2025.03.18

新鮮胚盤胞二個移植vs. 新鮮胚盤胞一個移植+凍結融解胚盤胞移植(Hum Reprod. 2025)

はじめに

ESHRE 2024年ガイドラインでは、複数胚移植は多胎妊娠率の上昇と関連し、母子両方に合併症リスク増加(早産、低出生体重、その他の周産期有害転帰)をもたらすとしています。多胎妊娠のリスクを軽減するため、ESHREは国際・国内の専門機関と同様に、選択的単一胚移植を推奨しています。特筆すべきは、このガイドラインでは臨床的または胚学的因子のいずれも複数胚移植を推奨する根拠にはならないと結論づけていることです。

ESHRE Guideline Group on the Number of Embryos to Transfer Hum Reprod. 2024 Apr 3;39(4):647-657. doi: 10.1093/humrep/deae010.

HFEAデータベースを用いた同様の新鮮胚盤胞二個移植vs. 新鮮胚盤胞一個移植+凍結融解胚移植の結果をご紹介いたします。

ポイント

新鮮胚盤胞一個移植+凍結融解胚盤胞移植は、特に39歳以下の女性において新鮮胚盤胞二個移植よりも良好な出生率、低い多胎出産率、合併症リスク低減が期待できます。

引用文献

Jack Tighe, et al. Hum Reprod. 2025 Feb 25:deaf028. doi: 10.1093/humrep/deaf028.

論文内容

新鮮胚盤胞二個移植vs. 新鮮胚盤胞一個移植+凍結融解胚盤胞移植と生殖医療予後がどのように異なるか調査したレトロスペクティブコホート研究です。

英国の全生殖医療施設データを包括するHFEAデータを使用して実施されました。

2010年から2019年の間に初回採卵、その後新鮮単一胚盤胞移植、新鮮二個胚盤胞移植、または新鮮胚盤胞一個移植+凍結融解胚盤胞移植を実施した全女性(N=71,807名)が対象となりました。

結果

新鮮胚盤胞一個移植+凍結融解胚盤胞移植では、新鮮胚盤胞一個移植(0.41、IQR 0.13)や新鮮胚盤胞二個移植(0.38、IQR 0.13)よりも高い出生率0.47(IQR 0.13)となりました(P < 0.05)。新鮮胚盤胞一個移植を基準とすると、新鮮胚盤胞一個移植+凍結融解胚盤胞移植(OR 6.87、95% CI 6.14–7.68)は新鮮胚盤胞二個移植(OR 28.20、95% CI 25.20–31.57)と比較して多胎出生が低く、早産も新鮮胚盤胞一個移植+凍結融解胚盤胞移植(OR 1.11、95% CI 1.06–1.15)が新鮮胚盤胞二個移植(OR 2.80、95% CI 2.67–2.94)より低くなりました。同様に、流産/新生児死亡も新鮮胚盤胞一個移植+凍結融解胚盤胞移植(OR 1.14、95% CI 1.08–1.21)が新鮮胚盤胞二個移植(OR 2.11、95% CI 1.98–2.24)より低いことが示されました。

生産率は39歳以下の女性では新鮮胚盤胞一個移植+凍結融解胚盤胞移植が新鮮胚盤胞二個移植と新鮮胚盤胞一個移植よりも一貫して高い一方(P < 0.05)、>39歳の女性では結果は同等でした(P > 0.05)。すべての年齢群で新鮮胚盤胞二個移植妊娠が多胎出生率を示しました(P < 0.05)。39歳以下の女性では新鮮胚盤胞二個移植が高い早産率と関連していましたが(P < 0.05)、>39歳では同等でした(P > 0.05)。さらに、37歳以下の女性では新鮮胚盤胞二個移植後に流産/新生児死亡率が高く(P < 0.05)、>37歳超の女性では新鮮胚盤胞一個移植と新鮮胚盤胞一個移植+凍結融解胚盤胞移植と同等でした(P > 0.05)。

私見

胚の質に関する情報がHFEA登録に記録されていないのは残念ですが、新鮮胚盤胞一個移植+凍結融解胚盤胞移植が新鮮胚盤胞二個移植より生殖予後はよさそうですね。国内ではどうしても胚移植回数で保険回数が制限されているため、どうしても複数胚移植がゼロにはなりません。PGT-Aを踏まえても議論していかないといけない課題かなと思っています。

 文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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