体外受精

2022.10.13

正倍数性受精胚の場合、発育スピードは成績に影響する?(J Assist Reprod Genet. 2023)

はじめに

現在まで正倍数性受精胚の場合、受精胚発育スピードが生殖医療成績に影響を与えるかどうかは結論が分かれています。 

  1. 生検日は生殖医療成績に影響しない(aCGH) 5日目受精胚の着床率48.8%、6日目受精胚の着床率51.2% Capalbo A, et al. Hum Reprod. 2014;29(6):1173–81. 
  1. 生検日は生殖医療成績に影響しない(NGS) 5日目受精胚と6日目受精胚と比較し、着床率(OR 0.6; 95%CI 0.4-1.2)・出生率(OR 0.3; 95%CI 0.1-1.3)と有意差なし Viñals Gonzalez X, et al. J Assist Reprod Genet. 2019;36(8):1623–9. 
  1. 生検日は生殖医療成績に影響する(aCGH) 5日目受精胚が6日目受精胚より成績がよい(着床率 44.6% vs. 66.7%、出生率44.8% vs. 60.4%) Maxwell SM, et al. Fertil Steril. 2016;106(6):1414-1419. 

今回NGSを用いた着床前診断で正倍数性胚の場合、発育スピードが成績に影響することを報告した論文をご紹介します。 

ポイント

複数の正倍数性受精胚が確保できた場合には発育スピードが速い受精胚から優先的に移植することを推奨します。施設により生検する時期などは一定の見解がないため、施設別で検討していく方が現段階では無難かもしれません。 

引用文献

Julia Buldo-Licciardi, et al. J Assist Reprod Genet. 2023 Feb;40(2):289-299.  doi: 10.1007/s10815-022-02695-7. 

論文内容

2015年10月から2022年2月までに、生殖医療施設にてNGSにて着床前診断を実施したレトロスペクティブコホートスタディです。主要評価項目は出生率とし、副次評価項目は継続妊娠率、着床率、流産率としました。 

結果

418名の女性555周期の胚移植を対象としました。5日目に生検された正倍数性受精胚は、6日目に生検された正倍数性受精胚と比較して高い出生率を示しました(62.3% vs. 49.6%; aRR 0.81, 95%CI 0.65-0.996)。生検日および胚盤胞の質で層別化すると、Good胚盤胞、Fair胚盤胞、Poor胚盤胞の継続妊娠率、着床率、流産率は生検日(5日/6日)で差を認めませんでした。Good胚盤胞では5日生検が6日目生検より高い出生率を示しました(74.3% vs. 51.3%; aRR 0.69, 95%CI 0.48-0.999)。Fair胚盤胞、Poor胚盤胞の出生率は生検日(5日/6日)で差を認めませんでした。 

胚のグループわけ胚盤胞の発育ステージ ICM/TE Grade 
Good Gardnerグレード 5 AA, AB, BA, BB, AC, BC, CA, CB 
  Gardnerグレード 4 AA, AB, BA, BB, AC, CA 
  Gardnerグレード 3 AA 
Fair Gardnerグレード 4 BC, CB 
  Gardnerグレード 3 AB, BA, BB, BC, AC  
Poor Gardnerグレード 3 CA, CB 

私見

着床前診断を実施しない場合は、発育スピードが速い形態良好胚が妊娠率・出生率ともに高くなります。発育スピードは、染色体異数性をとらえているだけなのか、染色体異数性以外の細胞質などの評価マーカーとなっているのか結論が出ていません。 
私個人としては、生検するタイミングは施設によって異なるため、各施設での成績に応じて移植受精胚を選択していくのが好ましいと考えています。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 着床前遺伝学的検査(PGT)

# 胚盤胞

# 胚質評価

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