体外受精

2022.09.28

子宮内膜症と体外受精ともに周産期予後に影響する?(Hum Reprod. 2022)

はじめに

子宮内膜症の周産期合併症との関連については矛盾する意見が複数あり、一定の見解が得られていません。また体外受精治療にて妊娠・出産に至っている子宮内膜症女性が多くいるため、体外受精の影響を加味した予後調査が必要とされてきました。子宮内膜症と体外受精ありなしで周産期有害事象を比較した大規模研究が報告されましたのでご紹介いたします。 

ポイント

子宮内膜症と体外受精は、独立して早産、分娩前出血、前置胎盤、計画出産(帝王切開分娩または陣痛誘発)のリスク上昇と関連し、子宮内膜症がない場合の体外受精は常位胎盤早期剥離、低出生体重、母体死亡率のリスク上昇と関連していました。 

引用文献

Ibinabo Ibiebele, et al. Hum Reprod. 2022 Aug 26;deac186. doi: 10.1093/humrep/deac186. 

論文内容

2006~2015年の妊娠578,221例を対象に、4群(内膜症なし/ARTなし、内膜症なし/ART、内膜症あり/ARTなし、内膜症あり/ART)で妊娠転帰を比較した人口ベースコホートスタディです。 

オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の15~45歳の全女性居住者と、妊娠20週以上または出生体重400g以上の単胎妊娠の指標となった名を対象とし、病院、妊娠・出産、死亡率のデータを使用しました。ロバスト誤差分散を用いた修正ポアソン回帰を用いて、社会人口学的因子および妊娠因子を調整し、修正リスク比(aRR)および99%CIを推定しました。 

結果

内膜症なしARTなし群と比較して、すべてのグループで早産(37週未満)リスク[内膜症なし/ARTあり(aRR 1.85、99%CI 1.46-2.34)、内膜症あり/ARTなし(aRR 1.24、99%CI 1.06-1.44)、内膜症あり/ARTあり(aRR 1.93、99%CI 1.11-3.35)]と分娩前出血リスク[内膜症なし/ARTあり(aRR 1.99, 99% CI 1.39-2.85)、内膜症あり/ARTなし(aRR 1.31, 99% CI 1.03-1.67)、内膜症あり/ARTあり(aRR 2.69, 99% CI 1.30-5.56)]が増加しました。 
また、前置胎盤[内膜症なし/ARTあり(aRR 2.26、99% CI 1.42-3.60)、内膜症あり/ARTなし(aRR 1.66、99% CI 1.18-2.33)]および計画出産[内膜症なし/ARTあり(aRR 1.08、99% CI 1.03-1.14)、内膜症あり/ARTなし(aRR 1.11、99% CI 1.07-1.14)]のリスク上昇がみられました。 
常位胎盤早期剥離[内膜症なし/ARTあり(aRR 2.36, 99% CI 1.12-4.98)]、母体死亡[内膜症なし/ARTあり(aRR 1.67, 99% CI 1.07-2.62)]、新生児低体重(<2500 g)[内膜症なし/ARTあり(aRR 1.45, 99% CI 1.09-1.93)]のリスクが増加しました。 

私見

この大規模スタディは99%CIで設定しているので比較的厳しく条件設定していると考えられます。この結果をみていると子宮内膜症・体外受精ともに周産期合併症との関連が示唆され、子宮内膜症の適応で体外受精治療を行った患者様は年齢が若くてもハイリスク妊娠と捉えた方が無難であると思います。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 子宮内膜症

# 周産期合併症

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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