プレコンセプションケア

2021.11.17

妊娠を希望する肥満女性の生活習慣の管理(Fertil Steril. 2021)

はじめに

妊娠を希望する肥満女性に対して、海外では薬剤療法・手術という選択肢が提案されていますが、日本国内では積極的に治療することが少ないような印象を受けます。肥満診療のための外来を併診していただくことも選択肢の一つですが、まずは生活習慣の管理についてご説明させていただきます。 

ポイント

肥満女性の妊娠前体重減少は妊娠率向上や妊娠糖尿病リスク低下に寄与します。体重7%の減量と週150分以上の中程度の運動習慣が推奨されますが、継続が最も重要です。 

引用文献

Obesity and reproduction: a committee opinion 
Fertil Steril. 2021. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2021.08.018

論文内容

肥満に関連した妊娠合併症があるため、妊娠を希望する肥満女性は、妊娠前の体重減少(最低限BMI 35kg/m²未満)に努め、妊娠中の体重増加に注意し、長期的な体重減少を目的として体重管理プログラムを検討すべきとしています。 
すべての名の体重管理は、食事の改善、運動習慣、心理・行動・ストレス管理を含めた生活習慣全般を見直すところから始めるのが得策とされています。 
妊娠前の体重減少を達成するために女性が妊娠許可時期を延期することは、女性年齢上昇に伴う生殖能力低下リスクとのバランスをとる必要があります。一方で、妊娠中の体重増加を最適化することは妊娠糖尿病の発生率を低下させることができます。 

結果

67名の無排卵性排卵障害の肥満女性(BMI 35-37の31歳前後の女性)を対象に、6ヶ月間の減量プログラムで平均10kgの減量を行ったところ、60名(90%)で排卵機能が回復し、そのうち52名(78%)が妊娠し、流産率は18%でした(A.M.Clark, et al. Hum Reprod. 1998)。 
そのほか、肥満女性は排卵障害以外にも卵子の質の低下・着床能にも負の影響を与える可能性があることが懸念されています。また、流産率は上昇し、周産期合併症・胎児先天障害リスクも上昇します。 
現在、すべての名を対象とした肥満の生活習慣改善のための推奨事項は、体重の7%の減量と、週150分以上のウォーキングなどの中程度の運動習慣を心掛けることです。 
通常の食事摂取量から500〜1000kcal/日減らせば、1週間で0.5-1kgの体重減少が期待でき、1000〜1200kcal/日の低カロリー食では6ヶ月間で平均10%の体重減少を達成できます。カロリー制限は減量を成功させるための基本原則であり、食事の構成はそれほど重要ではありません。 

私見

文章として残すこと、取り組み始めることは難しくないのですが、1年以上に渡って少なくとも10%の体重減量を達成できる名は20%程度といわれています。また、生活習慣改善が継続できないとリバウンドし、痩せた体重の60〜86%が3年後に、75〜121%が5年後に戻るとされています。 
ダイエットプログラムなどへの参加も一つの手段ですが、ドロップアウトされる方が多い傾向にあるようです。継続的につづけることができる生活習慣・運動習慣の改善が第一なのだと思います。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 体重、BMI

# プレコンセプション

# 総説、RCT、メタアナリシス

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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