体外受精

2025.05.07

反復着床不全女性の子宮内細菌叢改善に対する治療法(Reprod Biol. 2020)

はじめに

子宮内細菌叢検査がメジャーとなってきており、子宮内ラクトバチルス非優位の場合、どのような介入がよいか再検査をすべきか、患者様によく尋ねられます。経口プロバイオティクス+経口プレバイオティクス群、抗生物質群、経口プロビオティクス+経口プレバイオティクス+抗生物質群、腟プロビオティクス坐剤群、および腟プロビオティクス坐剤+抗生物質群で、子宮内ラクトバチルス改善に寄与した組み合わせを調査した報告をご紹介いたします。

ポイント

反復着床不全患者の約半数は子宮内のラクトバチルス優位でない状態であり、腟プロビオティクス膣坐薬と抗生物質の併用が効果的な治療法となる可能性があります。

引用文献

Daisuke Kadogami, et al. Reprod Biol. 2020 Sep;20(3):307-314. doi: 10.1016/j.repbio.2020.07.001.

論文内容

反復着床不全患者の子宮内細菌叢の状態を調べ、ラクトバチルス非優位(NLD)症例に対する治療を評価することを目的とした前向きコホート研究です。反復着床不全392名が登録され、子宮内細菌叢分析(16S rRNA遺伝子のV4可変領域を標的とした解析:イルミナ社のMiSeqプラットフォーム)を実施しました。ラクトバチルス非優位と診断された患者には、経口および腟プロビオティクスまたは経口プレバイオティクスと抗生物質の組み合わせによる治療が行われました。治療後の子宮内細菌叢の再分析を通じて結果を評価し、治癒率として結果が提示されました。
治癒率の判定は治療後の子宮内細菌叢の再分析を実施し、再分析でラクトバチルス優位(LD:ラクトバチルスとビフィドバクテリウムの合計)と判定された症例としました。

結果

反復着床不全患者の子宮内細菌叢の44.9%がラクトバチルス非優位であることが判明しました。最も多く検出された細菌はGardnerella vaginalisでした。経口プロビオティクス+経口プレバイオティクス群、抗生物質群、経口プロビオティクス+経口プレバイオティクス+抗生物質群、腟プロビオティクス坐剤群、および腟プロビオティクス坐剤+抗生物質群の治癒率はそれぞれ29.5%、33.33%、33.33%、43.6%、および78.6%でした。腟プロビオティクス坐剤+抗生物質群で有意な改善が見られました。

私見

使用しているサプリメント・薬剤は下記となります。

1)経口プレバイオティクス:乳由来糖タンパク質ラクトフェリン(Lf; Lactoferrin GX; NRL Pharma, Japan)
2)経口プロビオティクス:「レベニン」(Lebenin; Wakamoto Pharma,Japan)
3)腟プロビオティクス坐剤:「inVag」(Biomed, Krakow, Poland)
4)抗生物質:メトロニダゾール腟坐薬 250mg/日 + 経口メトロニダゾール 750mg/日 7日間

この報告のもう一つ面白いポイントは、月経周期によって子宮内細菌叢の組成が変化するという記載です。卵胞期に比べて黄体期の方がラクトバチルスの割合が高くなる傾向が見られました(P = 0.021)。月経後はラクトバチルスの割合が50%未満でしたが、卵胞の発育とともに徐々に増加し、黄体期には約70%に達することが示されています。同一患者での検討ではありませんが、過去の様々な細菌性腟症の検討でも黄体中期が意外と女性生殖器細菌叢が安定している時期であることがわかっています。

文責:川井清考(WFC group CEO)


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# 子宮内細菌叢検査

# 反復着床不全(RIF)

# ラクトバチルス

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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