プレコンセプションケア

2020.10.30

不妊治療中の短期的な体重増加は妊娠に影響する?(Fertil Steril. 2020)

はじめに

外来では肥満を伴う多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)患者に遭遇しますが、妊娠しないストレスもあり体重が増えてしまう方もいます。中長期的に女性の体重増加を認めると妊娠率の低下に繋がることはわかっていますが、治療中の短期的な体重増加は妊娠率に影響を与えるのでしょうか。このような部分に着目した論文です。 

ポイント

肥満を伴うPCOS患者では排卵誘発治療中に平均2.2kgの体重増加がみられましたが、3kg以上の体重増加があっても短期的には出生率に有意な影響は認められませんでした。ただし、単変量解析では妊娠率低下の傾向があり、長期的な体重管理の重要性は変わりません。 

引用文献

Wendy Vitek, et al. Fertil Steril. 2020 DOI: 10.1016/j.fertnstert.2020.06.002 

論文内容

排卵誘発を実施している原因不明不妊と肥満を伴うPCOSの女性における短期的な体重変化が出産と関連しているかどうかを、多施設不妊治療施設の無作為化試験の二次解析として、原因不明不妊女性900名と肥満を伴うPCOS女性750名の出生率を調査しました。 
原因不明不妊の女性にはクロミフェン、レトロゾールまたはゴナドトロピンの投与を開始し人工授精を実施する際、PCOSの女性にはクロミフェンまたはレトロゾールの投与を開始しタイミング療法を実施する際の4~5周期の体重測定を実施しました。 

結果

原因不明不妊の女性856名(平均女性年齢32歳、平均BMI 25.0kg/m²、平均AMH 2.2ng/ml)と肥満を伴うPCOSの女性697名(平均女性年齢29歳、平均BMI 35.0kg/m²、平均AMH 6.2ng/ml)の体重データを比較したところ、平均体重変化量は原因不明不妊の女性で-0.2±0.3kg、PCOSの女性で+2.2±0.2kgであり、2群に差はありませんでした。 
体重が3kg増加したPCOS女性は115例(16.4%)でした。PCOSの女性における体重増加は、3周期以上の治療を要した状況と関連していました。PCOSを有する女性で3kg以上の体重増加があった女性と体重増加しなかったPCOSを有する女性では、出生率に差はありませんでした。 
PCOSの女性では投薬にかかわらず平均2.2kgの体重増加がみられましたが、原因不明不妊の女性では排卵誘発時に短期的な体重変化はみられませんでした。PCOSを持つ女性の体重増加は出生率とは関連していませんでした。 

私見

この論文は、治療中に体重増加があったとしても妊娠率は急激には低下しないことを示した論文です。なぜ急激に低下しないと表現したかは、この論文は単変量解析ではすべてp<0.01としっかり有意差をもって妊娠率の低下を認めたのですが、女性年齢、人種、卵巣刺激法、不妊原因、不妊期間、テストステロンレベルなどで補正した多変量解析で調整オッズ比0.54(95%信頼区間 0.26-1.13)と有意差がなくなったからです。 
今回の研究では肥満患者の短期的な3kg以上の体重増加は妊娠率に影響しませんでしたが、研究デザインが異なると差が出る可能性も否定できないのかなとも思っています。 
過去の論文では、長期的な体重増加は妊娠までの期間の延長、流産率の増加を示唆する報告が複数でておりますので参考になさってください。 

  • 思春期から成人期にかけて体重が5kg以上増加した女性は、体重変化がない女性と比較して出産数が減少し、妊娠までの時間が長くなる(Gaskins AJら., Obstet Gynecol 2015) 
  • 成人期の体重が5kg増加するごとに流産率が3%上昇する(Gaskins AJら. Obstet Gynecol 2014) 
  • 妊娠前12~18ヶ月間に体重増加した女性は流産率が3%上昇する(Radin RGら. BJOG 2018) 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 体重、BMI

# プレコンセプション

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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