はじめに
当院では複数のプロゲステロン腟剤を用いていますが、その中の一つがルティナス®腟錠です。プロゲステロンの腟用製剤が一斉に発売されてきた時期には挿入用のアプリケーターがついていることに魅力を感じています。今回、SHIFT試験(Standard dose of effervescent vaginal progesterone tablet for luteal phase support In Frozen embryo Transfer cycle:国内生殖医療6施設344凍結融解胚移植周期を対象としてルティナスの治療効果を検討した多施設、単一群、前向き研究)をご紹介いたします。
ポイント
ルティナス300mg/dayを使ったホルモン調整周期凍結融解胚移植では、胚移植当日のプロゲステロン値は妊娠率に影響しませんでした。
引用文献
Fujiwara T, et al. Fertility & Reproduction. 2022. DOI:10.1142/S2661318222500074.
論文内容
対象周期は344周期(49周期:分割期胚移植、295周期:胚盤胞胚移植)であり、胚移植時の血清プロゲステロン値の平均は、分割期胚移植群12.6±5.1ng/ml、胚盤胞胚移植群12.1±5.3ng/mlでした。胚移植方法はホルモン調整周期でエストラジオール投与し子宮内膜厚7mm以上になったことを確認してから黄体補充を行っています。黄体補充はルティナス300mg/日のみの単剤投与を行っています。
結果
各グループ(分割期胚移植、胚盤胞胚移植)の妊娠率は、プロゲステロン投与6週(妊娠8週)の継続妊娠率(10.2%、28.1%)、プロゲステロン投与4週(妊娠6週)の臨床妊娠率(14.3%、37.3%)、プロゲステロン投与2週(妊娠4週)の化学妊娠率(20.4%、43.7%:血清βhCG≧20mIU/mL)でした。
胚盤胞移植群において胚盤胞のグレード・既往移植回数、女性年齢のみが生化学妊娠率と関連していました。
血中プロゲステロン濃度のカットオフで治療成績が変わるかどうか行ったサブグループ解析は胚盤胞群(n=295)で行っていますが、5つのカットオフ(6ng/ml、8ng/ml、10ng/ml、12ng/ml、14ng/ml)で多変量ロジスティック分析を行なっていますが、どのカットオフ値でわけても統計的有意差がありませんでした。
有害事象で薬剤関連性が指摘されたのは20例(5.8%)で、重篤な副作用はなく、性器出血(11例;3.2%)、ピンク色又は茶色のおりもの(7例;2.0%)、子宮内出血(1例;0.3%)等の出血に関連する項目でした。
私見
ひと昔前は胚移植日のプロゲステロン濃度は移植成績に関係ないと言われて、最近では、やはり影響するのでは?という風潮になっています。
〜関連コラム〜
移植時の血中P値は妊娠率に影響しますか。(論文紹介:肯定意見)
ホルモン調整周期凍結融解胚移植の移植日プロゲステロン値は治療成績に影響する?(Reprod Biomed Online. 2022)
ホルモン調整周期凍結融解胚移植の移植日プロゲステロン値は高すぎるとダメなの?( Reprod Biol Endocrinol. 2021)
ホルモン調整周期凍結融解胚移植の黄体補充は腟剤+内服がよい(Hum Reprod. 2021)
プロゲステロン筋肉注射が腟剤より移植成績に奏功する(Fertil Steril. 2021)
今回のデータはシングルアームなので、比較対象試験ではなく本当に低プロゲステロン値群で成績低下がないかどうかの判断が難しいところがありますが、患者様に説明するには十分な資料と考えています。
文責:川井清考(WFC group CEO)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。