はじめに
重度の子宮内膜症、特に両側子宮内膜症性嚢胞と診断された女性は、早発卵巣不全になるリスクが高く、卵巣予備能マーカー(AMH)も低値となり得ることがあります。さらに子宮内膜症性嚢胞に対して外科的治療を行うと、卵巣予備能がより低下する可能性があります。そのために、卵子凍結・胚凍結を検討すべきかどうかESHREガイドライン2022では触れられています。
ポイント
重度の子宮内膜症女性に対しては妊孕性温存(卵子凍結、胚凍結)について情報提供を検討してもよさそうです。
引用文献
子宮内膜症ESHREガイドライン2022の概説
Christian M Becker, et al. Hum Reprod Open. 2022 Feb 26;2022(2):hoac009. doi: 10.1093/hropen/hoac009.
論文内容
「重度の子宮内膜症の場合、臨床医は子宮内膜症女性と妊孕性温存の是非について話し合うべきである。ただし、子宮内膜症女性における妊孕性温存の有益性はまだまだ結論が出ていない。」がStrong recommendationとなっています。
慎重な姿勢のコメントとして下記が挙がっています。
* 子宮内膜症女性に対して、卵巣予備能を測定し評価することをルーチンで行うことに科学的根拠がないこと(もちろん、国内でも2023年現在、保険診療内では行えません。)
* 卵子凍結の利用率は他のノンメディカルな卵子凍結に比べて高いものの、費用対効果を考えると、卵子凍結を系統的に薦める段階ではないこと
Somigliana E, et al. Fertil Steril 2020;113: 765-766.
* 卵巣刺激を行う卵子凍結ではなく、術中卵巣組織凍結が卵子凍結の代替手段となるかはデータが乏しく結論が出ていないこと
Donnez J, et al. Minerva Ginecol 2018;70: 408-414.
根拠は下記コラムを参考になさってください。
子宮内膜症女性への卵子凍結の生殖医療結果(Fertil Steril. 2020)
子宮内膜症女性への卵子凍結の特徴(Reprod Biomed Online. 2020)
私見
日本産科婦人科学会がノンメディカルな卵子凍結を行う前に閲覧することを推奨する動画の中で、「病気により、妊娠しにくくなることが懸念される場合の卵子凍結:がんといった病気への治療ではなく、生殖機能の低下を引き起こすと予想される病気そのものを理由として、卵子凍結を行う場合があります。ある病気では、他の人よりもずっと早くに卵巣の働きが低下することが知られています。そうした病気がある方では、健康な方に比べて、妊娠できる年齢が限られてしまうと予想されることから、あらかじめ卵子を取って保存しておく方法です。」という文言があります。こちらはターナー症候群などを見据えた概念だと思いますが、子宮内膜症も選択肢に入ってくるのではないかと感じています。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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