治療予後・その他

2023.05.22

社会的卵子凍結に興味がある女性のニーズ(J Assist Reprod Genet. 2023)

はじめに

社会的卵子凍結は今後、日本でどのような位置付けになるか、治療成績・女性のライフプランマネージメントなどから総合的に判断する必要があります。社会的卵子凍結を実施する女性が何を求めているのかオンライン調査した報告です。 

ポイント

社会的卵子凍結に興味がある女性(オーストラリア)のニーズを明らかにしました。多くは社会的卵子凍結についての理解が不十分であり、情報源は不妊治療クリニックのウェブサイトが主でした。女性の多くは、社会的卵子凍結に関する情報を得ることができても、決断に葛藤を感じ、意思決定支援が必要であることが示されました。女性たちは、一般的に2年程度かけて決断を下し、30歳までに情報提供を受けることを希望していました。提供者は医療従事者やオンラインリソースが望ましいことが示されました。 

引用文献

Sherine Sandhu, et al. J Assist Reprod Genet. 2023 Apr 14;1-16. doi: 10.1007/s10815-023-02796-x. 

論文内容

18~45歳のオーストラリア人女性で、社会的卵子凍結に関心がある人を対象にオンライン調査を実施しました。調査内容は、社会的卵子凍結の情報源、情報提供で希望する内容、社会的卵子凍結と女性年齢による妊孕性の知識(研究別尺度)、卵子凍結の実施有無の意思決定に関する葛藤や不安を測定するための尺度Decisional Conflict Scale(DCS)、社会的卵子凍結を検討した期間としました。 

結果 

332名の参加者のうち、249名(75%)が社会的卵子凍結を検討したことがあり、83名(25%)が検討したことがありませんでした。54%が社会的卵子凍結の情報を検索したことがあり、不妊治療クリニックのウェブサイトを利用したことがある人が70%と多い傾向がありました。ほとんど(73%)が、女性は19~30歳の間に社会的卵子凍結の情報を得るべきだと考えていました。誰から情報提供されたいかについては、生殖医療専門医(85%)、家庭医(81%)でした。社会的卵子凍結情報を提供するために最も有用と評価されたその他の方法は、オンラインでした。知識スコアの平均値は8.9/14(SD:2.3)でした。社会的卵子凍結を検討したことのある参加者の平均DCSスコアは57.1/100(SD:27.2)、78%が高いDCSスコア(>37.5)を有していました。回帰分析では、知識スコアが1ポイント上昇(-2.4;95% CI -3.9, -0.8)、生殖医療専門医への相談(-17.5;[-28.0, -7.1])、社会的卵子凍結決定(-18.4;[-27.5, -9.3])がDCSスコアと関連がありました。意思決定までの期間の中央値は24カ月(IQR:12.0-36.0)でした(n=53)。 

私見

社会的卵子凍結を検討される女性は、妊娠に関する知識を含めて早期に知る必要があることや、正しい情報を得たいこと、そして卵子凍結を躊躇する要因の一つが費用面であることが示唆されます。一方、医療者の視点では、社会的卵子利用率や治療成績を含めた有効性が重要です。
不妊治療や美容医療もそうでしたが、自費診療の医療の話題になったときに、利益優先や本質とは異なる議論になることがあります。中立的かつ継続的に、安心して情報提供を行う必要があると思っています。 

社会的卵子凍結に関するコラム
社会的卵子凍結は女性年齢とともに出産率は低下する(論文紹介)
社会的卵子凍結のSWOT分析(Reprod Biomed Online. 2022)
社会的卵子凍結の出産予測因子は?(Fertil Steril. 2022.) 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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# プレコンセプション

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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