
はじめに
凍結融解胚移植(FET)の実施数は過去10年間で著しく増加しています。FET後の妊娠では早産やSGAのリスクが低下する一方、LGAや巨大児のリスク上昇が報告されています。出生体重に関する研究は多くありますが、妊娠初期の子宮内発育、特に頭殿長(CRL)に焦点をあてた研究は限られており、さらに移植時の受精胚のステージ(初期胚vs胚盤胞)がCRLに与える影響は検討されていませんでした。今回、FETと新鮮胚移植におけるCRLの差異と受精胚ステージの影響を検討した前向きコホート研究をご紹介いたします。
ポイント
凍結融解胚移植後の妊娠では新鮮胚移植と比較して妊娠初期のCRLがやや大きく、この差は初期胚移植・胚盤胞移植いずれでも認められ、移植時の受精胚ステージとは独立した関連でした。
引用文献
Ye M, et al. Hum Reprod Open. 2026. doi: 10.1093/hropen/hoag014.
論文内容
新鮮胚移植またはFETによる単一胚移植後の生児出産に至った妊娠において、妊娠初期の子宮内発育に差があるかどうか、また移植時の受精胚ステージ(初期胚vs胚盤胞)がその差に関連するかどうかを検討することを目的とした前向きコホート研究です。2013年から2024年にかけてカロリンスカ大学病院で実施された単一胚移植後の単胎生児出産3445例を対象としました。このうち54.3%がFET後の妊娠であり、62.2%が胚盤胞移植後の妊娠でした。全例で妊娠6~12週に超音波検査によるCRL(mm)測定が行われました。FET群と新鮮胚移植群のCRL比較には一般化加法モデル(GAM)が用いられ、在胎週数、移植時の受精胚ステージ、両親の年齢、母体BMI、妊娠初期の喫煙状況を交絡因子として調整しました。
結果
新鮮胚移植と比較して、FET後の妊娠では在胎週数、移植時の受精胚ステージ、両親の年齢、母体BMI、喫煙状況を調整した後、CRLがわずかに大きい傾向が認められました(β=0.30mm、95%CI: 0.00–0.60、P=0.053)。移植時の受精胚ステージで層別化したサブグループ解析では、初期胚移植群(β=0.31mm、95%CI: −0.01–0.62、P=0.055)および胚盤胞移植群(β=0.22mm、95%CI: 0.06–0.39、P=0.008)のいずれにおいてもFET群でCRLが大きい傾向が維持されていました。初期胚移植と胚盤胞移植のCRL比較では、交絡因子調整後に初期胚移植群でCRLがやや大きい傾向が認められました(β=0.17mm、95%CI: −0.01–0.34、P=0.060)。INTERGROWTH-21stプロジェクトの自然妊娠集団を基準としたCRL Zスコアの解析では、FET群・新鮮胚移植群ともに在胎63日以前のCRL Zスコアの平均値が0を上回っており、ART妊娠では自然妊娠と比較して妊娠初期の発育が促進されている可能性が示唆されました。
私見
FET後のCRL増大に関する先行研究としては、Von Versen-Höynck, et al.(J Assist Reprod Genet. 2018)が301例の小規模コホートで初めてFET後のCRL増大を報告し、その後Cavoretto, et al.(Fertil Steril. 2021)、Mitta, et al.(J Clin Med. 2024)、Yang, et al.(AJOG Glob Rep. 2024)がより大規模なサンプルで同様の結果を確認しています。
CRL増大のメカニズムとして、Discussionでは仮説が議論されています。
- 凍結保存によるインプリント遺伝子のエピジェネティック変化(H19/IGF2メチル化など)
- 新鮮胚移植周期における超生理的ホルモン環境と子宮内環境の違い(UtA-PI上昇を含む)
- 黄体の有無(ホルモン調整周期 vs 自然周期)
文責:川井清考(WFC group CEO)
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