はじめに
卵巣刺激低反応群(Bologna/POSEIDON)の正常胚が含まれている割合を比較(Fertil Steril. 2023)
では、Bologna基準とPOSEIDON基準で予測される卵巣応答低下(POR)と、少なくとも1個の正倍数性胚を獲得できる割合はI群>>II群>III群>IV群>Bologna基準PORの順に低下していくことがわかりました。過去の報告も踏まえて見ていくと結論はでていません。
キーとなる報告をご紹介させていただきます。
ポイント
卵巣刺激低反応群において、出生率に影響する因子は年齢か回収卵子数か。Bologna基準とPOSEIDON基準での複数の研究を比較検討し、両因子の重要性を解説します。
引用文献
- Sandro C Esteves, et al. Hum Reprod. 2021 Jul 19;36(8):2157-2169. doi: 10.1093/humrep/deab152.
- Yuval Fouks, et al. Fertil Steril. 2022 Jul 9;S0015-0282(22)00386-7. doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.06.008.
- Wenhao Shi, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2019 Jun 26;10:409. doi: 10.3389/fendo.2019.00409.
- Luo M, et al. Reprod Biomed Online. 2022 Feb;44(2):247-253. doi: 10.1016/j.rbmo.2021.09.006.
まとめ
回収卵子数が年齢(42歳まで)なら有利という報告(PGT介入なし)
2015年から2017年の3生殖医療機関での9,073名のレトロスペクティブ・コホート研究では、累積出生率はPOSEIDON群POR女性では非POR女性に比べて低くなりました。(33.7% vs 50.6%;P < 0.001)
- Ia 群(n = 212): 27.8%, Ib群 (n = 1785): 47.8%
- IIa 群(n=293): 14.0%, IIb 群(n=1275): 30.5%
a群は4個未満の回収卵、b群は4-9個の回収卵 - III群(n=245): 29.4%, IV群(n=623): 12.5%.
女性年齢、有効胚数、胚移植可能周期数、回収卵子数、不妊期間、BMIに累積出生率が依存していました。
若年層は31歳前後、高齢層は38-39歳です。回収MII卵子は2-5個での症例で検討しています。
Sandro C Esteves, et al. Hum Reprod. 2021 Jul 19;36(8):2157-2169. doi: 10.1093/humrep/deab152.
回収卵子数が年齢(40歳未満)なら有利という報告(PGT介入あり)
2014年12月から2020年6月までの単一医療施設で傾向スコアマッチングにて異数性率を検討したレトロスペクティブ・コホート研究です。
Bologna/POSEIDONを用いない40歳未満で、AFC、AMH、FSHに基づいて決定した卵巣予備能低下(DOR:AMH 1.1ng/mL)と、回収卵子数が 5 個以下(POR)としました。
DORまたはPORと診断された若い女性は、胚盤胞の異数性率や胚移植あたりの出生率が同等でした。周期あたりで移植できる正倍数性胚がない割合はDOR または POR患者では増えるため、妊娠予後に影響を与えている因子は卵子の質ではなく数であることがわかりました。
この報告は平均36歳で、回収MII卵子 DOR群は7.8個、nonDOR群は14.3個の比較検討です。
Yuval Fouks, et al. Fertil Steril. 2022 Jul 9;S0015-0282(22)00386-7. doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.06.008.
若い女性の卵巣予備能低下や卵巣反応不良は卵の質に影響を与える?(Fertil Steril. 2022)
若年が有利という報告(PGT介入なし)
2014年1月から2017年1月までの新鮮胚移植+その後の凍結胚移植を行った18455周期を対象とした単一施設でのレトロスペクティブ・コホート研究では、若年で採卵したことがないAFC 5個以上の群>若年で採卵したことがありAFC 5個以上あり、前回10個以上回収卵子があった群>I群>III群>II群>IV群とし、年齢依存性に累積出生率が変化するとしました。
若年層は30歳前後、高齢層は39-40歳です。回収卵子数はI群 7.4個、 II群5.1個、III群 4.3個、IV群 2.9個、若年で採卵したことがありAFC 5個以上あり前回10個以上回収卵子があった群 12.6個、若年で採卵したことがないAFC 5個以上の群 12.3個でした。
Wenhao Shi, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2019 Jun 26;10:409. doi: 10.3389/fendo.2019.00409.
若年が有利という報告(PGT介入あり)
2013年から2020年までの単一医療施設で1269体外受精周期3016個胚盤胞(PGT)で異数性率を検討したレトロスペクティブ・コホート研究では、I群、II群、III群、IV群の胚盤胞数あたりの正倍数性胚率は57.2%, 34.9%, 52.4%, 26.2% (P < 0.001) である。少なくとも一つの胚盤胞をもつ割合も副次評価項目で評価されており、II群/IV群はI群/III群よりも低くなっていました。
若年層は31歳前後、高齢層は39歳前後です。
| I群 (n=244) | II群 (n=454) | III群 (n=96) | IV群 (n=475) | |
| 平均MII数 | 6.31 | 6.05 | 5.93 | 4.47 |
| 生検あたりの正倍数性胚率 | 57.2% | 34.9% | 52.4% | 26.2% |
| 周期あたり 0正倍数性胚 | 18.4%周期 | 44.9%周期 | 18.8%周期 | 61.7%周期 |
| 周期あたり 1正倍数性胚 | 28.7%周期 | 36.1%周期 | 38.5%周期 | 27.2%周期 |
| 周期あたり 2正倍数性胚以上 | 52.9%周期 | 18.9%周期 | 42.7%周期 | 11.2%周期 |
Luo M, et al. Reprod Biomed Online. 2022 Feb;44(2):247-253. doi: 10.1016/j.rbmo.2021.09.006.
私見
年齢なのか、卵巣予備能なのか?という議論は、論文を書くために対象とする設定をどのように設定するかによって変わってきているというのが事実だと感じています。つまり、体外受精の出生率には年齢と回収卵子数共に卵巣予備能不良群でもキーファクターであることがわかります。
関連コラムは以下となります。
- 卵巣刺激低反応群(Bologna/POSEIDON)の正常胚が含まれている割合を比較(Fertil Steril. 2023)
- 卵巣刺激低反応群(POSEIDON1-4群)での分娩にたどり着く割合(Front Endocrinol (Lausanne). 2019)
POSEIDON基準
- I群(若年者、予期せぬPOR)
35歳未満、AMH≧1.2ng/mL or AFC≧5だが、前周期MII回収卵子数が10個未満 - II群(高齢、予期せぬPOR)
35歳以上、AMH≧1.2ng/mL or AFC≧5だが、前周期MII回収卵子数が10個未満 - III群(若年層、予想されるPOR)
35歳未満、AMH<1.2ng/mL or AFC<5 - IV群(高齢、予想POR)
35歳以上、AMH<1.2ng/mL or AFC<5
Bologna基準
(3基準のうち2つ以上、最大ゴナドトロピン投与によるキャンセルサイクルが過去2回あること):
- 40歳以上、AMH < 0.5 – 1.1 ng/mL もしくは AFC 5 – 7個未満、前周期回収MII卵が4個未満
文責:川井清考(WFC group CEO)
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