今回は胚移植についてお話します。
胚移植の概略につきましては当グループ作成の動画「胚移植」を御参照ください。
胚移植は体外受精により精子と卵子が受精した「胚」を子宮に戻す技術で、医師・看護師・培養士の共同作業になります。この胚移植は体外受精の集大成であり、この胚移植が上手く出来なければ、それまでの工程(卵巣刺激ー採卵ー受精ー培養ー凍結ー融解)の努力は水の泡になります。それだけに、医師・看護師・培養士は細心の注意を払い胚移植に臨んでおります。
以下、胚移植の流れに沿って各々の役割を簡単に解説したいと思います。
培養士は先ず、胚をEmbryoGlueと呼ばれる培養液に移します。この培養液はヒアルロン酸が高濃度に含まれた胚移植専用の培養液です。ヒアルロン酸は着床前の胚と子宮内膜の「対峙」において、接着を促進する分子と言われており、ヒアルロン酸を高濃度に含む培養液を胚移植に使用することで胚移植後の着床率・妊娠率・生産率が改善したとする報告が多く見られます。

次いで、医師は移植用カテーテルを誘導する外筒(ガイド)を予め子宮内膜底近辺に配置します。医師の合図で培養士は胚をインキュベーターから取り出し、患者さんから見える様、モニターの中央に映し出します。これは患者さんに御自身の胚を見て頂く「治療の見える化」を強く意識して拘りを持って実施している工程です。そして、胚をカテーテルの中に丁寧に吸い、移植カテーテルの先端を外筒の中に入れます。ここからは医師と培養士の共同作業となります。医師は超音波ガイドを操作してモニター上、カテーテルの先端が子宮腔のどこにあるのかを正確に映し出して、カテーテル先端を子宮腔の適切な場所に配置します。これが完了すると、医師の合図で培養士がカテーテルの中にある胚を子宮腔に注入します。この瞬間、モニター上では白く光ったように見えます。
子宮腔の向き・傾き・形は患者さん毎により様々で、あらゆるタイプに対応するため数種類のカテーテルを準備しています。医師は妊娠成績を常にチェックし、培養士は常に同じ量の培養液を吸引すること、また、胚を戻す時に常に同じスピードで戻すことを心掛けて日々胚移植を実施しています。
文責:平岡謙一郎(亀田IVFクリニック幕張 生殖補助医療管理胚培養士)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。