体外受精

2025.03.10

発育卵胞体積0.56 cm3以上で成熟卵子を予測できる(Fertil Steril. 2024)

はじめに

3D超音波は婦人科・産科診断画像において画期的な発展をもたらしました。卵胞モニタリングについては、従来は2D超音波を用いて平均直径で測定されてきましたが、刺激された卵胞は完全な球形ではないため、実際の卵胞サイズを正確に評価できない場合があります。SonoAVCを用いて卵胞の体積を測定し、成熟卵子を予測する最適な閾値を検討した報告をご紹介いたします。

ポイント

トリガー日に0.56 cm3以上の卵胞体積があれば成熟卵子が得られる可能性が高く、2-3 cm3以上の卵胞は採卵前に自然排卵のリスクがあります。

引用文献

Adela Rodríguez-Fuentes, et al. Fertil Steril. 2024 Jun;121(6):991-999. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.01.029.

論文内容

体外受精において、個別の卵胞穿刺により成熟卵子を回収できる最小卵胞体積を決定し、SonoAVC follicleを用いて卵巣刺激から卵子回収までの平均卵胞成長を計算することを目的とした前向き観察研究です。

53名の体外受精を受ける女性を対象に、3D超音波を用いて卵胞誘発日と採卵日に同一卵胞を明確に識別できる症例を調査しました。14名の卵子ドナーと39名の体外受精患者から206個の卵胞が研究対象となりました。全症例でGnRHアンタゴニスト法/ GnRHアゴニスト+10,000 IU hCGトリガーが使用されています。トリガー決定基準として、「0.7 cm³以上の卵胞が70%以上、かつ2 cm³以上の卵胞が少なくとも2個」という基準が使用されています。

主要評価項目は卵胞誘発日の卵胞体積と卵子成熟度の関係、副次評価項目はSonoAVC follicleで測定した卵胞誘発日から卵子回収日までの卵胞成長率としました。

結果

卵胞誘発日に206個の卵胞が選択されました。そのうち5個は卵子回収日に識別できず、おそらく排卵後が原因(平均体積4 cm3、範囲2-7 cm3)で、48個では卵子が得られませんでした。卵胞体積と卵子成熟度の関係は153個の卵胞で検討され、125個(82%)が成熟卵子、28個(18%)が未成熟卵子でした。

ROC曲線の解析ではAUC値が0.73(95%信頼区間:0.65-0.80)でした。0.56 cm3超の卵胞体積が、最も高いユーデン指数を持つカットオフポイントであり、成熟卵子を予測する感度85%、特異度64%でした。卵胞誘発から採卵までの平均卵胞成長は、53%の症例で26-50%でした。

私見

GnRHアゴニスト+10000 IU hCGトリガーをすると22mm大の発育卵胞は採卵時に一定頻度で排卵となり、12mm前後から成熟卵子としてとれてくることがわかります。臨床経験の印象とほぼ一致します。
またトリガーから採卵までに発育サイズ割合も勉強になりました。
0 % 19 (12%)、1-25 % 39 (26%)、26-50 % 81 (53%)、51-75 % 12 (8%)、>75 % 2 (1%)
まだ2Dエコーが卵胞計測の主流ですが、もう一歩で3Dエコー+AI補正の時代になりそうですね。

 文責:川井清考(WFC group CEO)

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