体外受精

2025.05.01

子宮内膜組織と子宮内腔液の細菌叢の違い(Clin Chem. 2018)

はじめに

腟内と子宮内腔では菌量が全く異なります。では、子宮内の場合、内腔液と内膜組織で細菌叢の違いがあるのでしょうか。Moreno I, et al. Microbiome. 2022と別のグループの報告です。

ポイント

子宮内腔液と子宮内膜組織で検出される細菌叢は完全に一致せず、両方のサンプルからの採取が子宮内細菌叢の包括的な理解に必要です。

引用文献

Yingyu Liu, et al. Clin Chem. 2018 Dec;64(12):1743-1752. doi: 10.1373/clinchem.2018.289306.

論文内容

体外受精患者の子宮内腔液と子宮内膜組織サンプルのマイクロバイオータを大規模並列シーケンスを用いて系統的にプロファイリングすることを目的としています。細菌の16S リボソームRNA遺伝子(V4領域)をPCR増幅し、98%の塩基配列同一性を持つシーケンシングリードを一つの細菌分類群としてクラスター化しました。サンプルごとに異なるリード数を考慮するため、各分類群のリードカウントを正規化してから、サンプル間での相対的存在量を比較しました(イルミナ社のMiSeq® Reagent Kit v2)。

結果

Verrucomicrobiaceae、Brevundimonas、Achromobacter、Exiguobacterium、Flavobacteriumを含む13分類群が、子宮内腔液ではなく子宮内膜組織にのみ一貫して検出されました。8分類群は内膜組織ではなく子宮内腔液で検出されました。22分類群は子宮内腔液と内膜組織間で存在量に有意差がありました(調整後P値、4.1×10^-25~0.025)。子宮内膜組織が子宮内腔液よりも下記の特徴がありました。
・1000リードあたりの分類群数が多い(6.2倍:菌が豊富)
・Shannon多様性指数が高い(1.8倍:特定分類群にかたよっていない)
・Pielou均等性指数が高い(3倍:細菌分布が均等)

私見

子宮内膜細菌叢を調査する際に、サンプリング方法によって結果が大きく異なる可能性があることを示しています。子宮内腔液液と子宮内膜組織で検出される細菌叢の違いです。特に、Ureaplasma(ウレアプラズマ)は子宮内腔液でより高い相対的存在量を示しております。
Liu et al.(2018)の研究では、子宮内膜液と子宮内膜組織間で検出される細菌叢に明確な違いが示されました:


1. 子宮内膜組織にのみ検出される分類群:
Verrucomicrobiaceae、Brevundimonas、Achromobacter、Exiguobacterium、Flavobacterium
1. 子宮内腔液にのみ検出される分類群:
Finegoldia、Anaerococcus、Clostridiales
Moreno et al.(2022)の研究では、さらに以下の違いが示されました:
2. 子宮内膜組織にのみ検出される分類群:
Cupriavidus、Escherichia、Klebsiella、Bacillus、Finegoldia、Micrococcus、Tepidimonas


どのような特徴があるかなと生成AIに聞いたら、内腔液に嫌気性菌、運動性/非付着性細菌が検出され、内膜組織にはバイオフィルムを検出する細菌が検出されるが多いと記載されています。言われてみると納得いく結果だと思っています。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 子宮内細菌叢検査

# 反復着床不全(RIF)

# ラクトバチルス

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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