はじめに
体外受精の卵巣刺激は「自然周期、低刺激、中刺激、高刺激」と説明されることが多いです。体外受精の中刺激・高刺激に用いられる卵巣刺激はhMG/rFSHなどの注射製剤を使用しますが、使用量や製剤によって特徴があります。
* hMG/rFSH総投与量が多いほど、回収卵子数が多く、未熟卵子数が少なく、未熟卵子割合が少ない。
* hMG/rFSH 1日投与量が多いほど、回収卵子数が多く、未熟卵子が多くなり、未熟卵子割合が高くなる。
* hMG/rFSH投与日数が短いと、未熟度が高くなる。
などの特徴を示した報告もあるように、適切な製剤を適切な量・適切な日数使用することが良好な卵巣刺激を行う上で重要となります。
今回、古い論文ですがhMG/rFSH製剤の卵巣刺激時の微妙な違いを比較検討した報告をご紹介します。
ポイント
hMG製剤をrFSH製剤と150単位/日投与量で比較したロング法における特徴
- 血清LH濃度↑
- 血清FSH濃度↑
- 血清P濃度↓
- トリガー時10mm未満小卵胞誘導↓
- トリガーまでの卵巣刺激日数↓
- ゴナドトロピン投与量↓
引用文献
Marco Filicori, et al. Fertil Steril. 2003 Aug;80(2):390-7. doi: 10.1016/s0015-0282(03)00594-6.
論文内容
rFSH製剤またはhMG製剤を用いて行った調節卵巣刺激の特徴を注意深く検討することを目的とした無作為化比較試験です。50名のIUI候補の患者を対象としました。
ロング法にて、rFSH製剤(150IU/日、25人)またはhMG製剤(150IU/日、25人)に無作為に割り付けました。評価項目は血清LH濃度、FSH濃度、hCG濃度、E2濃度、P濃度、T濃度を毎日測定、2日ごとの経腟超音波検査を実施し、妊娠率および流産率、薬剤費用を検討しました。
結果
rFSH製剤で2名の女性は反応しませんでした。治療期間(hMG製剤 10.8±0.4日 vs. rFSH製剤 12.4±0.5日)、ゴナドトロピン投与量(21.7±0.8アンプル vs. 25.3±1.3アンプル)、費用(288±10EUR vs 1,299±66EUR)、血清P濃度、トリガー時の10mm未満の小卵胞数はhMG製剤が低く、血清LH濃度、hCG濃度、FSH濃度、卵巣刺激8日目の14mm以上の発育卵胞数はhMG製剤が高くなりました。妊娠率、流産率、双胎妊娠率に差はありませんでした。
私見
良好胚獲得できない患者様へは薬剤微調整で結果が異なる可能性があります。
以前のコラム、卵巣刺激を変えると胚質は変わる?(Fertil Steril. 2021)をご参照ください。
薬剤の特徴を踏まえた卵巣刺激をおこなっていくことが重要だと考えています。
- 卵巣刺激に用いるHMG製剤とは
- 調節卵巣刺激(卵巣刺激)の注射製剤の選び方 (ESHRE guideline 2025年版アップデート)
- 卵巣刺激ゴナドトロピン製剤の使い方の注意点(J Assist Reprod Genet. 2021)
- 卵巣予備能が低い女性には卵巣刺激のFSH量は増量すべき?(Hum Reprod. 2022)
- 卵巣予備能が高い女性への卵巣刺激減量は治療に影響しない?(OPTIMIST study: Hum Reprod. 2017)
- 卵胞液ステロイドホルモン比較(FSH製剤とFSH+LH製剤) (Sci Rep. 2020)
- 卵巣刺激(FSH vs. FSH+LH)の効果は一緒なの?(Hum Reprod. 2022)
文責:川井清考(WFC group CEO)
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