体外受精

2023.09.28

不妊症と診断された女性の受精卵は染色体異常になりやすい?(J Assist Reprod Genet. 2023)

はじめに

不妊症と診断を受けていないカップルに妊孕性について話すときに、不妊症患者のデータに基づき話すことが多くあります。不妊症の診断の有無に関わらず流産率は変わらないかどうかなどは頻繁に話題にあがります。不妊症診断の有無によってPGT-Aの結果が変わるかどうか調査した報告をご紹介いたします。

ポイント

不妊症診断の有無にかかわらず、移植可能胚、一周期あたりに正倍数性胚が一つ以上獲得できるカップル割合は変わりませんでした。不妊症と診断をうけていないカップルに妊孕性について話す時に、卵巣刺激を行った時の移植可能胚の割合は不妊症患者と変わらないと説明することで問題なさそうです。

引用文献

Emily A Clarke, et al. J Assist Reprod Genet. 2023 Sep 16. doi: 10.1007/s10815-023-02941-6.

論文内容

2016年から2021年に生殖医療施設でPGT-Aを利用した不妊診断のないカップル(不妊症と診断されていない、不妊治療をしていないカップルで、胚バンクやPGT―M目的でPGT―Aを実施したカップルに限定)を対象としたレトロスペクティブコホート研究です。不妊カップルとは、女性年齢と回収卵子数を調整因子として、1対3でペアマッチさせました。主要評価項目は胚盤胞異数性率としました。

結果

283名の不妊症の診断をうけていないカップルと849名の不妊症カップルを対象としました。年齢中央値、AMH、Day2 E2値はグループ間で同じでしたが、Day2 FSH値は不妊症の診断をうけていない女性が高くなりました(6.9 vs.6.5, p<0.01)。異数性率は不妊症の有無にかかわらず同等でした(fertile 33.7% vs. infertile 31.8%、p = 0.11)。正倍数性胚率は不妊症の診断をうけていないカップルで高く(fertile 50.8% vs. infertile 47.0%、p < 0.01)、モザイク率は不妊症カップルで高くなりました(fertile 13.3% vs. infertile 19.2%、p < 0.01)。移植可能胚率(fertile 64.0% vs. infertile 66.3%、p = 0.07)は、1個以上の正倍数性胚を得たカップル割合(fertile 90.1% vs. infertile 87.3%、p = 0.25)はグループ間で同じでした。重回帰分析を行っても結果は変わりませんでした。

私見

当データは年齢中央値34歳 BMI 22.1-22.5 AMH 2.6-3.1ng/mLの患者を対象としています。35歳をカットオフにサブグループ解析も行なっていますが、結果は同じ傾向です。モザイク率がinfertile群で高くなっている理由は今後大規模研究で再現性があるかどうか知りたいところです。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 染色体

# 着床前遺伝学的検査(PGT)

# 胚質評価

# 年齢素因

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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