体外受精

2024.01.17

卵子1個あたりの生児獲得率(Fertil Steril. 2023)

はじめに

PGT-A(着床前検査)は、母体年齢の高い女性において、形態学的評価に頼ってきた移植胚の選択をサポートし、移植あたりの生児獲得率を改善すると考えられてきました。しかし、最近、若い女性においては、正常胚を廃棄する可能性があるという懸念からPGT-Aの有用性は疑問視されています。低刺激クリニックで、採卵で得られた卵子1個あたりの生児獲得率を、PGT-A有無をふくめて検討した報告をご紹介いたします。  

ポイント

若年へのPGT-A実施は、卵子あたりの生児獲得率を低下させる結果となりました。

引用文献

Riwa Sabbagh., et al.  Fertil Steril. 2023 Dec;120(6):1210-1219.  doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.08.972.

論文内容

米国の単一生殖医療施設で行ったレトロスペクティブコホート研究です。
2014年1月から2020年12月までの自己卵子を用いた体外受精周期のデータ、残存胚の出生率にはSARTデータベースでの成績を用いて推定しました。
採卵した卵子1個あたりの生児出生率を評価項目としています。  

結果

12,717名20,677周期の採卵を対象とし、248,004個の回収卵子から57,268個胚(新鮮胚と凍結胚)を得ました。残胚ない患者における1卵子あたりの生児獲得率は2.82%でした(35歳未満:11.3%〜42歳以上:1.2%)。PGT-A有無でも結果は同様でした(PGT-Aあり:2.88%、PGT-Aなし:2.79%)。  
SARTが推奨する年齢(35歳未満、35-37歳、38-40歳、41-42歳、43歳以上)で層別化すると、35~37歳および38~40歳の患者におけるPGT-A実施は、PGT-Aを実施しなかった患者と比較して、卵子あたりの生児獲得率が高くなりました(P<.05)。残胚がありSARTデータベースで補正した場合、35歳未満および35-37歳の患者におけるPGT-Aの使用は、卵子あたりの生児獲得率を低下させましたが(それぞれP<.001およびP=.03)、38-40歳および41-42歳の患者では卵子あたりの生児獲得率を改善しました(それぞれP=.006およびP=.005)。ポアソン回帰分析により、PGT-A実施がPGT-A未実施と比較して卵子1個あたりの生児獲得率を低下させる年齢閾値が38.5歳であることがわかりました。  

私見

この報告の一番のメッセージはPGT-Aが低刺激クリニックの採卵あたりの生児獲得率にメリットがあるかどうかだと思っています。  
報告を行った施設は低刺激で回収卵子数が約4-5個のクリニックであり、複数胚を準備してPGT-Aを実施するような環境ではないのがポイントだと感じています。  
準自然周期で1卵子あたりの生児獲得率を報告した論文がありますが、成績が大きく異なっています。施設ごとの培養環境はすごく大事であること、どのような回収卵子を分母とするかで卵子あたりの生児獲得率が大きく異なることが伺えます。  

女性年齢
出産に必要な卵子数
卵子あたりの出産率

女性年齢  出産に必要な卵子数卵子あたりの出産率
<353.8126
354.0724
364.7521
375.0819
385.9316
399.0611
4010.879
4115.056
4222.674

Sherman J Silber, et al.  Fertil Steril. 2017 May;107(5):1232-1237.より改変  

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 着床前遺伝学的検査(PGT)

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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