
はじめに
着床の成立には発生能を有する受精胚と受容性のある子宮内膜の双方が必要であり、子宮内膜受容能の不良は着床不全の約3分の1を占めると推定されています。経腟超音波は非侵襲的かつ簡便で、子宮内膜厚・容積・エコー像・蠕動・血流など複数の受容能マーカーを評価できますが、単一のマーカーで内膜受容能を正確に反映することは困難です。
本研究は凍結融解胚移植周期において、これら超音波パラメータと臨床妊娠率の関連を解析し、すべての胚移植患者に適用可能な子宮内膜受容能スコアリングシステムを構築することを目的としています。
ポイント
超音波で評価する6項目から成る子宮内膜受容能スコアリングシステムを開発・検証し、合計スコア5点以上で臨床妊娠率が有意に上昇することを示しました。
引用文献
Zhang CH, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2022 Aug 9;13:907874. doi: 10.3389/fendo.2022.907874.
論文内容
超音波で評価する各種パラメータと臨床妊娠率との関連を解析し、すべての胚移植患者に適用可能な子宮内膜受容能スコアリングシステムを構築することを目的としています。
中国施設にて2021年3月から8月に初回凍結融解胚移植周期を受けた女性562人を対象としたレトロスペクティブ研究です。先天性子宮形態異常、内膜ポリープ、粘膜下筋腫、子宮内腔癒着、子宮留水症、子宮腺筋症、卵管留水症、子宮内膜症、着床前遺伝学的検査周期、卵子提供周期、および移植胚がすべて非高グレードであった周期は除外され、高グレード胚を少なくとも1個含む周期が解析対象とされました。
内膜調整は月経周期の規則性に応じて、自然排卵周期、排卵誘発周期(レトロゾール2.5〜5mg/日、必要に応じhMG 75〜150IU、主席卵胞径18mmでhCG 6,000〜10,000IU)、ホルモン調整周期(経口エストロゲン4〜6mg/日で開始し内膜厚8mm到達で油性プロゲステロン40mg/日を開始、その日をD0と定義)、およびGnRHa併用ホルモン調整周期の4方式が用いられました。黄体補充は排卵またはD0から油性プロゲステロン40mg/日を開始し、移植後は経口ジドロゲステロン10mg×2/日と腟用プロゲステロンゲル90mg/日へ移行、妊娠8週まで継続後に漸減しています。受精胚はガラス化法で凍結保存され、分割期胚はD3、胚盤胞はD5に、超音波ガイド下にCookカテーテルを用いて最大2個まで移植されました。
子宮内膜受容能の評価は、移植当日朝に経腟3次元(3D)超音波を施行し、内膜厚・エコー輝度・容積・運動(蠕動)・血流を、全例同一医師・同一機器で計測しています。取得した3DボリュームはVOCALソフトウェアで解析されました。
各指標は臨床妊娠率との関係に基づき採点され、内膜厚(<8mm=0点/8〜14mm=1点/>14mm=2点)、内膜容積(<3ml=0点/>3ml=1点)、機能層エコーの均一性(不均一=0点/均一=1点)、正中エコー輝線(不明瞭=0点/明瞭=1点)、内膜蠕動(なし・正方向・両方向=0点/方向不明=1点/負方向=2点)、内膜血流(なし・機能層1/2以下=0点/1/2超=1点/内膜表面到達=2点)の6項目合計をその患者の子宮内膜受容能スコアとしています。主要評価項目は臨床妊娠率です。
結果
凍結融解胚移植を受けた計562人を解析し、315例(56.0%)が臨床妊娠に至りました。生化学的流産率7.1%、双胎妊娠率9.8%、異所性妊娠率0.5%、自然流産率7.0%でした。妊娠群は非妊娠群に比して有意に若年で(32.64±3.92 vs. 34.82±5.03歳)、基礎E2が低く、AMHが高く、不妊期間が短いという背景差を認めました。超音波パラメータの両群比較では、有意差を認めたのは正中エコー輝線のみであり(明瞭66.7% vs. 55.3%、P=0.006)、子宮内膜厚・容積・蠕動・血流には統計学的有意差を認めませんでした。機能層エコーの均一性は妊娠群でより均一でしたが有意差には至りませんでした(P=0.084)。6項目合計スコアは妊娠群4.60±1.55、非妊娠群4.11±1.53で有意差を認め(P=0.000)、臨床妊娠率は受容能スコアの上昇とともに増加し、スコアが5点以上に達すると臨床妊娠率は有意に改善しました(63.7% vs. 49.5%、P=0.001)。本スコアリングシステムは別の602例(2021年9月〜2022年4月)でも同様の結論が再現され、さらに非高グレード胚移植例でもスコア5点以上で臨床妊娠率が有意に高い結果でした(45.3% vs. 33.7%、P=0.037)。
私見
注目すべきは、6指標のうち両群直接比較で有意差を示したのが正中エコー輝線のみであった点です。明瞭例の臨床妊娠率は60.7%と不明瞭例の48.8%を有意に上回り、本研究で最も鍵となる単独指標といえます。評価時点がプロゲステロン作用後の移植当日であり典型的なtriple line patternを捉えにくいため、輝度を「機能層の均一性」と「正中輝線の明瞭性」に分けて簡易評価した点が方法論上の工夫です。
各指標の先行研究は肯定・否定が混在します。今後、収束していくかどうかが楽しみです。
内膜厚はBu Z, et al. Gynecol Endocrinol. 2016が予後への影響を支持する一方、Shakerian B, et al. Fertil Steril. 2021は予測に有用でないとし、本研究では8mm未満を移植しない方針のため両群差を認めませんでした。
内膜容積はMaged AM, et al. Gynecol Endocrinol. 2019が予測因子となり得るとする一方、Boza A, et al. J Gynecol Obstet Hum Reprod. 2020は有用性を否定しています(AUC 0.48)。
蠕動はIJland MM, et al. Fertil Steril. 1997以来、低頻度が着床に有利とされ、本研究では負方向蠕動群で妊娠率が最も高く、移植胚を子宮底近傍へ留置する手技との関連が考察されています。
血流は深部・表層に及ぶほど妊娠率が上昇する傾向を認めました。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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