はじめに
Deirdre Zander-Foxらによる、PIEZO-ICSI/従来の顕微授精を同一卵巣刺激周期の卵子で成績を比較検討した論文が報告されました。
Deirdre Zander-Foxらと当院は以前より交流を持たせていただいています。
論文掲載決定しました
私たちもsibling oocyteでのPIEZO-ICSI/従来の顕微授精との比較をしたかったのですが、全症例PIEZO-ICSIに移行してしまっていたため、このような研究が行えず、他機関から出る報告を心待ちにしていました。
ポイント
PIEZO-ICSIが従来のICSIと比較して受精率を高め、卵子変性率を低下させ、胚盤胞の質を高める可能性があります。
引用文献
Deirdre Zander-Fox, et al. Fertil Steril. 2024 Jan 23:S0015-0282(24)00031-1. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.01.028.
論文内容
PIEZO-ICSIが、従来のICSIと比較して、受精率を高め、変性率を低下させ、卵子1個あたりの有効胚率を高めるかどうかを検討することを目的とした多施設sibling-oocyte試験です。対象はall ICSIを行う患者で、成熟卵子が7個以上回収できた周期としました。卵巣刺激後採卵で回収できた成熟卵子を2群に分け、半分を従来の顕微授精、残り半分をPIEZO-ICSIとしました。回収卵子数が奇数の場合は従来の顕微授精に端数を回しました。顕微授精の順番によるバイアスがないように、最初に実施する顕微授精も無作為化しています。
評価項目は正常受精率としました。
結果
正常受精率はPIEZO-ICSI 71.6%、従来の顕微授精 65.6%であり、PIEZO-ICSIが良い結果となりました。従来の顕微授精に比べて卵子の変性率が低下していました(6.3% vs. 12.1%)。5日目胚盤胞(4ランクに分類)の上位2ランクに値する正常受精胚・胚盤胞培養あたりの割合もPIEZO-ICSIで増加しました(33.3% vs. 27.5%)。胚異数性率や有効胚率、臨床妊娠率、出生率には差を認めませんでした。
私見
世界的に不妊治療分野でのPIEZO-ICSIが評価され始めてきています。当院の平岡も定期的に各国に指導に参りますが、しっかり論文報告なども行っていきたいと思っています。
当院培養士が記載しているコラムも参考になさってください。
- 顕微授精(従来法)
- 顕微授精について(ピエゾ法)
- 動画で見る顕微授精の流れ①(動画)
- 動画で見る顕微授精の流れ②(動画)
- 動画で見る顕微授精の流れ③その壱
- 動画で見る顕微授精の流れ③その弐(動画)
- 新しい慣性体を用いたピエゾICSIは従来の顕微授精に比べて優れているのか?(論文紹介)
文責:川井清考(WFC group CEO)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。