はじめに
レトロスペクティブおよびプロスペクティブコホート研究は、PRP卵巣治療が卵巣反応不良女性の卵巣予備能パラメータ、回収卵子数、および妊娠率に有益であるという報告が何本か出ています。
– Sills ES, et al. Gynecol Endocrinol 2018;34:756–760.
– Pantos K, et al. Cell Transplant 2019;28:1333–1340.
– Farimani M, et al. Mol Biol Rep 2019;46:1611–1616.
– Sfakianoudis K, et al. J Clin Med 2020;9:1809.
– Cakiroglu Y, et al. Aging (Albany NY) 2020;12:10211–10222.
– Cakiroglu Y, et al. Aging (Albany NY) 2022;14:2513–2523.
ただ、まだまだ懐疑的な部分が多く、排卵障害を起こしている早発卵巣不全患者には試用する価値があると思いますが、排卵がある女性に対してはどの程度効果があるのでしょうか。卵巣反応不良女性に対するPRP卵巣注入効果を検討した多施設ランダム化比較試験をご紹介いたします。
ポイント
体外受精にて反応不良(3個未満)既往がある38歳未満の女性において、卵巣内PRP注入法は卵巣刺激後の回収成熟卵子数を改善しません。
引用文献
Nola S Herlihy, et al. Hum Reprod. 2024 May 9:deae093. doi: 10.1093/humrep/deae093.
論文内容
米国およびトルコの生殖医療施設にて2020年1月から2022年11月に実施された多施設ランダム化比較試験です。患者(38歳未満、過去2周期以上で採卵時回収卵子3個未満、単一遺伝子疾患なし、卵巣手術歴なし、子宮内膜症なし、BMI 35以下、重度男性因子なし)をPRP群と対照群のいずれかに無作為に割り付けました。卵巣刺激、採卵、顕微授精、PGT-A、単一胚移植を受けました。回収成熟卵子数を主要評価項目とし、卵巣予備能検査(AFCおよび血清AMH値)、胚盤胞率および倍数体胚盤胞率、継続妊娠率を副次評価項目としました。
結果
83名の患者が組み入れ基準を満たし、自家卵巣内PRP注入群(n = 41)と対照群(n = 42)に無作為に割り付けられました。1周期あたりに採取されたMII卵子の数(PRP群と対照群でそれぞれ2.8±2.4個 vs. 3.1±3.3個、P = 0.9)、胚盤胞数(1.0±1.3個 vs. 1.3±2.1個、P = 0.8)、正倍数性胚数(0.8±1.1個 vs. 0.9±1.6個、P = 0.5)と有意差は認めませんでした。少なくとも1個の正倍数性胚盤胞を得る可能性(45% vs. 37%、P = 0.4;RR 0.9、0.6-1.2)、継続妊娠率(31% vs. 29%、P = 0.9;RR 1.0、0.7-1.3)にも差は認められませんでした。介入後のAFC(7.9±4.5個 vs. 6.8±4.8個、P = 0.3)およびAMH(0.99±0.98 vs. 0.7±0.6、P = 0.2)も差は認めませんでした。
私見
採取できる卵子数が少ないからといって、排卵がある女性に卵巣内PRP注入を勧めるのは、特別な理由がない限り優先順位が高い治療とは思えません。最近行われた、もう一つのPRP卵巣注入の論文(下記コラム)もPRPが良いのではなく卵巣への機械的刺激が良いのでは?くらいの論調にとどまっています。
文責:川井清考(WFC group CEO)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。