体外受精

2025.02.18

調節卵巣刺激法が卵子紡錘体位置と臨床成績に与える影響(Reprod Med Biol. 2024)

はじめに

成熟卵子紡錘体は可視化されていたとしても、第一極体の近くに位置したり離れた位置に存在したりします。紡錘体可視化/位置/受精・胚発生との関連についてはいくつかの研究がありますが、調節卵巣刺激法の違いについては十分な検討がされていませんでした。こちらを調査した報告をご紹介いたします。

ポイント

調節卵巣刺激法によらず、卵子紡錘体の位置は受精率、胚盤胞到達率、妊娠率、生産率、流産率に影響を与えません。ただし、高齢女性では紡錘体が極体から離れた位置に存在する傾向があります。

引用文献

Inoue T, et al. Reprod Med Biol. 2024. doi: 10.1002/rmb2.12601

論文内容

調節卵巣刺激法の種類が卵子内紡錘体の可視化や位置に与える影響、およびICSI後の臨床成績への影響を調査することを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。
調節卵巣刺激法は、PPOS法、ロング法・ショート法、GnRHアンタゴニスト法で実施されました。最低2個の卵胞が18-20mmに達した時点で、ロング法、ショート法、GnRHアンタゴニスト法ではuhCGトリガーを、PPOS法ではuhCGとGnRHアゴニストを投与し、34-36時間後に採卵を行いました。
採卵後の卵子は、ヒアルロニダーゼ溶液でピペッティング、裸化処理後、ICSI前に極体直下をθ=0°とし、紡錘体位置を0〜180°で分類。
– θ=0°
– 0°<θ≤30°
– 30°<θ≤60°
– 60°<θ≤90°
– 90°<θ≤180°

結果

各刺激法において、紡錘体可視化卵子は非可視卵子と比較して正常受精率が有意に高く、紡錘体位置による差は見られませんでした。また、妊娠率、出生/継続妊娠率、流産率にも紡錘体の可視化や位置による差は見られませんでした。
多変量解析にて、高齢女性はθ=0°に比べ、紡錘体が30°以上離れた位置にある傾向があり、加齢と紡錘体の位置変化に相関が示唆されました。
私見興味深いのは、高齢女性では紡錘体が極体から離れた位置に存在する傾向が認められた点です。加齢卵子における極体の変性と紡錘体からの外れた位置にあることは過去の報告でも示されています。多大な時間がかかるだろう臨床ビッグデータでの解析結果は、本当に日常臨床に役立てやすいので本当にありがたい報告だなと感じています。

私見

興味深いのは、高齢女性では紡錘体が極体から離れた位置に存在する傾向が認められた点です。加齢卵子における極体の変性と紡錘体からの外れた位置にあることは過去の報告でも示されています。多大な時間がかかるだろう臨床ビッグデータでの解析結果は、本当に日常臨床に役立てやすいので本当にありがたい報告だなと感じています。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 顕微授精(ICSI)

# 紡錘体

# 卵巣刺激

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

卵巣予備能低下女性に対する経皮テストステロン投与のQOLへの影響(Hum Reprod. 2026)

2026.04.06

1回の採卵から2人の出生:one-and-doneアプローチ(Fertil Steril. 2026)

2026.03.16

プロバイオティクス・微量栄養素サプリメントと採卵成績の関連(J Assist Reprod Genet. 2025)

2026.03.10

PCOS女性におけるIVF前経腟的卵巣穿刺術の有用性(J Assist Reprod Genet. 2026)

2026.03.04

hCGトリガー日LH値とIVF周期における累積出生率(J Assist Reprod Genet. 2025)

2026.03.03

体外受精の人気記事

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

SEET法は凍結融解胚移植の成績を悪化させる可能性あり?(Sci Rep. 2025)

凍結融解胚盤胞移植後7-11日目の血清hCG値出生予測(F S Rep. 2025)

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

高齢女性における二個胚移植の臨床結果(当院関連報告)

自然周期採卵における採卵時適正卵胞サイズ(Frontiers in Endocrinology. 2022)

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

SEET法は凍結融解胚移植の成績を悪化させる可能性あり?(Sci Rep. 2025)

2026.03.30

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

凍結融解胚盤胞移植後7-11日目の血清hCG値出生予測(F S Rep. 2025)

2026.01.23

体外受精児や人工授精児と自然妊娠兄弟の出生時特性の比較(Fertil Steril. 2026)

2026.04.01