
はじめに
排卵において、LHとhCGは同じ受容体を介して作用しますが、その半減期や子宮内膜への影響には違いがあります。今回、修正自然周期における凍結融解正倍数性胚盤胞移植において、hCG投与時のLH値が妊娠成績に及ぼす影響を調査したパイロット研究をご紹介いたします。
ポイント
修正自然排卵周期における凍結融解正倍数性胚盤胞移植では、hCG投与日のLH値が13mIU/ml以上の場合、hCG投与を避けて自然排卵を待つことで妊娠率が改善される可能性があります。
引用文献
Litwicka K, et al. J Assist Reprod Genet. 2018;35(3):449-455. doi: 10.1007/s10815-017-1089-x.
論文内容
凍結融解正倍数性胚盤胞単一移植のための修正自然周期において、hCG投与を避けるべきLHの閾値を定義することです。2015年9月から2016年の間に、167名の患者が修正自然排卵周期で凍結融解正倍数性胚盤胞単一移植を受けました。すべての受精胚はICSIにより作成され、胚盤胞期に生検を受け、aCGHにより分析されました。平均卵胞径が少なくとも17mmに達した時点で、LH値にかかわらず10,000 IUのhCGを用いて排卵誘発を行いました。主要評価項目は、hCG陽性率と臨床妊娠率でした。中間解析では、hCG投与日のLH値が13mIU/ml以上の場合、臨床成績が悪影響を受ける可能性が示唆され、この条件下では自然排卵を待つことが望ましいことが示されました。
結果
排卵誘発のためにhCGを投与された患者のうち、修正自然周期におけるhCG陽性率と臨床妊娠率は、LH≧13mIU/mlの周期ではLH<13mIU/mlの周期と比較して有意に低くなりました(それぞれ45.4%対73.3%、36.4%対65.9%)。LH値が13mIU/ml以上の患者では、hCG投与により、hCG陽性率(hCG投与群45.4%対自然排卵群74.5%)および臨床妊娠率(hCG投与群36.4%対自然排卵群64.7%)が有意に低下しました。患者の基本的特性はすべての群で同等でした。
胚移植のタイミングと黄体補充について
修正自然排卵周期群では、hCG投与の2日後からプロゲステロン50mg/日(Prontogest, IBSA)の筋注による黄体補充を開始し、プロゲステロン投与開始6日目(すなわちhCG投与後8日目)に胚盤胞移植を実施しました。自然排卵群においても同様のプロトコールが用いられたと考えられます。妊娠が成立した場合、黄体補充は妊娠12週まで継続されました。流産率は修正自然周期で12.5%、自然排卵で12.7%と同等でした。LH≧13mIU/mlでhCG投与を受けた女性では流産は発生しませんでした。
私見
この知見は、Fatemi HMらの報告(Fertil Steril. 2010)と一致しており、同研究では自然LHサージ後にhCGを投与された患者の妊娠率がわずか4.3%であったのに対し、LHサージのない患者では30%であったと報告されています。
内因性LHが既に上昇している状態でhCGを投与すると、子宮内膜の早期黄体化が誘導され、着床ウィンドウがずれる可能性があります。これらが原因の可能性があるので、hCG投与されていること自体が内膜をダメにしていることはないと個人的には考えています。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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