
はじめに
季節的な変動が体外受精の成績に影響を及ぼすかどうかについては、これまで議論が続いていました。新鮮胚移植も議論が分かれていますが、2025年にでたメタアナリシスでは季節間での臨床成績に差がないとされています。特に凍結融解胚移植においては、卵巣刺激・採卵と切り離して子宮内膜胚受容能や着床環境に対する季節的影響を評価できる可能性があります。ビッグデータでの季節変動と妊娠成績との関連を評価したレトロスペクティブコホート研究をご紹介いたします。
ポイント
新鮮胚移植および凍結融解胚移植のいずれにおいても、季節的な変動は臨床妊娠率や出生率に有意な影響を及ぼさないことがわかりました。
引用文献
Xitong Liu, et al. Sci Rep. 2019 Nov 20;9(1):17185. doi: 10.1038/s41598-019-53919-3.
論文内容
季節的な変動が体外受精において妊娠および出産の予後に影響を及ぼすかどうかを評価することです。中国の生殖医療センターにて2014年から2017年に新鮮胚移植・凍結融解胚移植を受けた合計38,476人の患者を対象としたレトロスペクティブコホート研究です。IVFおよびICSI周期の両方を対象とし、新鮮胚移植と凍結融解胚移植の両方を評価しました。患者は採卵日に基づいて4つの季節(冬:12月から2月、春:3月から5月、夏:6月から8月、秋:9月から11月)にグループ分けされました。多変量ロジスティック回帰分析を用いて季節変動と出生との関連を評価し、モデルは気温、日照時間、不妊タイプ、不妊期間、不妊因子、BMIなどの共変量について調整されました。研究施設は中緯度のモンスーン気候に属し、夏は高温多雨、冬は寒冷乾燥という明確な季節性を持つ環境でした。
結果
38,476名の女性が登録され、そのうち25,097名が新鮮胚移植周期を、13,379名が凍結融解胚移植を受けました。25,097刺激周期のうち、13,223周期(52.69%)が新鮮胚移植に到達しました。
新鮮胚移植の出生率は春が50.36%、夏が53.14%、秋が51.94%、冬が51.33%でした。臨床妊娠率は夏季に最も高かったものの(62.00%)、出生率には有意差は認められませんでした(P=0.118)。採卵あたりの平均卵子数は10.47±6.66個で、季節間で有意差はありませんでした(P=0.180)。移植受精胚数も季節間で差がありませんでした(P=0.50)。ゴナドトロピン投与量と投与期間は秋季に最も多く、有意差が認められました(それぞれP<0.001、P=0.003)。春季と冬季には最良質受精胚数が最も多い傾向がありました(P=0.001)。夏季には臨床妊娠率が最も高かったものの、出生率と出生体重には差がありませんでした。流産率と異所性妊娠率も季節間で有意差は認められませんでした(それぞれP=0.985、P=0.867)。暦月間の臨床妊娠率は新鮮胚移植では55.1%から63.4%の間で変動しました(P=0.073)。
凍結融解胚移植における暦月間の臨床妊娠率は58.8%から65.1%の間で変動しましたが、統計学的有意差は認められませんでした(P=0.220)。未調整モデルおよび調整モデル(モデルI:気温と日照時間で調整、モデルII:気温、日照時間、不妊タイプ、不妊期間、不妊因子、BMIで調整)のいずれにおいても、季節変動は出生率と関連していませんでした。新鮮胚移植では未調整モデルにおいて、春と比較して夏季の出生率がわずかに高い傾向が見られました(OR、1.11;95%CI、1.03-1.20;P値0.005)が、調整モデルでは有意差は消失しました。出生体重についても新鮮胚移植、凍結融解胚移植ともに季節間で有意差は認められませんでした。
私見
Kirshenbaum, et al. PLoS One. 2018でも凍結融解胚移植の季節成績変化を否定しています。生殖補助医療生殖予後に関して、季節性はほぼ意識しなくて良いという結論になっています。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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