
はじめに
ガラス化凍結法の普及により凍結受精胚移植の成績が向上し、より積極的な卵巣刺激による高い卵子数の獲得が可能となりました。今回、1回の体外受精刺激サイクルから2人以上の出産を達成できる患者の割合を特定することを目的とした大規模なレトロスペクティブコホート研究をご紹介いたします。
ポイント
不妊カップルの25%以上が1回の採卵から2人以上の出生を期待することができます。
引用文献
Alexandra Huttler, et al. Fertil Steril. 2026 Jan;125(1):73-82. doi: 10.1016/j.fertnstert.2025.07.029.
論文内容
1回の体外受精周期後に2人以上の出産を達成する不妊カップルの割合を特定することを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。2014年1月1日から2022年12月31日の間に初回体外受精周期を受けた患者カップルを対象としました。初回採卵周期とその後の自己卵子由来受精胚移植周期を評価しました。初回採卵から得られた胚移植後の出生を解析し、残存する凍結胚を有する患者については、年齢と卵子数を用いて追加の出生可能性を推定しました。単変量および多変量ロジスティック回帰モデルを使用して、既知の不妊因子とアウトカムとの関連を評価しました。
患者は90%以上がGnRHアンタゴニスト法による卵巣刺激を受けました。新鮮胚移植の基準はE2<3,000 pg/mL、プロゲステロン<1.5 ng/mLとし、Day 3(初期胚)またはDay 5(胚盤胞)で移植を実施しました。凍結はDay 5、6、7の胚盤胞段階でガラス化法により行い、Gardner分類で3BB以上の高品質胚盤胞のみを凍結しました。凍結胚移植は修正自然周期またはホルモン調整周期を使用しました。大部分が単一胚移植でした。
結果
合計20,710回の移植を受けた16,474人の患者が含まれました。合計8,223人の患者(49.9%)が1人以上の出産し、1,857人の患者(11.3%)が2人以上の出産を経験しました。初回周期で新鮮胚移植を受けた患者は8,325人(50.5%)で、そのうち3,179人(38.2%)が新鮮胚移植から出産しました。
残存凍結受精胚の使用による追加出生の推定値を含めると、9,599人の患者(58.3%;95%CI、57.6%-59.1%)が1人以上の出産を達成し、4,511人の患者(27.3%;95%CI、26.8%-28.0%)が2人以上の出産すると予測されました。2人以上の出産する患者の割合は、採卵数の増加に伴い進行的に増加し、年齢の上昇とともに減少しました。利用可能胚盤胞数は採卵数グループ全体で進行的に増加し、1-3個グループで0.4個、25個超グループで11.8個でした。2人以上の出産を期待するオッズの予測因子には、年齢と採卵数が含まれました。合計5,105人の患者(31.0%)が着床前遺伝学的検査(PGT-A)を使用しました。PGT-Aを使用した患者は、2人以上の出産を達成するオッズが低くなりました(aOR、0.56;95%CI、0.50-0.62)。OHSSは全体で84人(0.5%)にのみ発生し、最も高い採卵数グループでも33人(2.0%)でした。
私見
今回の報告は、ARTを始める前に治療計画のガイドになりますね。そして使いやすいfigだと思います。
同時に、PGT-Aは妊娠・出産達成までの時間を短縮し、移植あたりの出生率を改善する可能性があるものの、PGT-Aの使用は採卵あたりになると累積出生率を増加させないことを示唆しています(Yan J, et al. N Engl J Med. 2021、Mejia RB, et al. F S Rep. 2022、Kemper JM, et al. Hum Reprod. 2020)。つまり、PGTで戻さないと判断した胚に出産につながる胚があるか、PGT手技自体の胚への侵襲なんでしょうね。卵巣過剰刺激症候群(OHSS)への懸念は、確率は低いとはいえど、やはりゼロに近づける努力はすべきですね。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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