
はじめに
胚と子宮内膜の協調的なクロストークが着床成立に必須である一方、移植培養液への母体側因子の補充による着床能改善は重要な介入候補です。ヒアルロン酸は子宮内膜分泌期に発現し、CD44を介した胚接着・浸潤を促進することが知られ、プロラクチン(PRL)は脱落膜化と栄養膜細胞の遊走・浸潤に関与します。本RCTは、融解後培養と胚移植時にヒアルロン酸とPRLを併用することで、単一凍結融解胚盤胞移植(SVBT)後の出生率が改善するかを検討した報告です。
ポイント
ヒアルロン酸とPRL併用の融解後培養・胚移植培養液は、初期流産を減少させ、SVBT後の出生率を改善しました。
引用文献
Ezoe K, et al. Reprod Biomed Online. 2026 Apr;52(4):105417. doi: 10.1016/j.rbmo.2025.105417.
論文内容
ヒアルロン酸とPRLを併用した融解後培養および胚移植が単一凍結融解胚盤胞移植(SVBT)後の出生率を改善するかを検討した、3群並行二重盲検RCTです。
2020年10月から2021年5月に加藤レディスクリニックで実施され、SVBTを受ける1236組のカップルを1:1:1の比で3群に無作為割付しました。透明帯除去後、融解胚盤胞をヒアルロン酸・PRLを含まない培養液(対照群)、ヒアルロン酸添加移植培養液(EmbryoGlue群)、またはPRL(100 ng/ml)を添加したEmbryoGlue(HA+PRL群)で2~4時間培養した後、同一培養液で胚移植を施行しました。対象は30~45歳、buserelinによる排卵誘発、卵胞期早期血清PRL <30 mIU/ml、過去の胚移植3回以下、流産1回以下の女性で、SVBT当日の薄い子宮内膜(<7 mm)、黄体機能不全(プロゲステロン<8 ng/ml)、融解直後の胚盤胞変性は除外されました。主要評価項目は出生率(妊娠22週以降の分娩)でした。
結果
出生率は対照群31.4%(128/407)、EmbryoGlue群31.7%(130/410)、HA+PRL群39.1%(160/409)で、HA+PRL群は対照群(OR 1.40; 95% CI 1.05–1.87; P=0.0219)およびEmbryoGlue群(OR 1.38; 95% CI 1.04–1.84; P=0.0266)と比較して高値でした。多変量ロジスティック回帰分析(女性年齢、男性年齢、過去の胚移植回数、子宮内膜厚、胚培養時間、内細胞塊・栄養外胚葉のグレードで補正)でも一貫した結果が得られました(AOR 1.46; 95% CI 1.06–2.02; P=0.0203、対対照群)。妊娠判定陽性率および臨床妊娠率は3群間で同等でしたが、継続妊娠率はHA+PRL群で対照群(P=0.0142)およびEmbryoGlue群(P=0.0249)に比べ有意に高く、初期流産率はHA+PRL群で対照群(P=0.0073)およびEmbryoGlue群(P=0.0053)より有意に低値でした。流産、死産、異所性妊娠、多胎妊娠の発生率は3群間で同等でした。妊娠合併症(妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、前期破水、低置胎盤、前置胎盤、癒着胎盤、常位胎盤早期剥離、帝王切開)の頻度・種類、ならびに新生児予後(在胎週数、出生体重、SGA、LGA、早産、先天奇形、1か月時の発達評価)はいずれも3群間で同等でした。サブグループ解析では凍結時期(P=0.0494)と血清プロゲステロン(P=0.0045)に有意な交互作用が認められ、Day 4/5胚盤胞でHA+PRL群の出生率が対照群より高く(AOR 1.55; 95% CI 1.08–2.22)、Day 6/7胚盤胞では差が認められませんでした(AOR 0.79; 95% CI 0.33–1.87)。血清プロゲステロン<17.4 ng/mlの症例ではHA+PRL群が対照群より良好な成績を示し(AOR 1.84; 95% CI 1.16–2.90)、≥17.4 ng/mlでは明らかな差は認められませんでした(AOR 1.12; 95% CI 0.70–1.77)。
私見
PRLは胚の子宮内膜への接着促進というよりは、栄養膜細胞の遊走・浸潤を促進し、胚の変性・アポトーシスを抑制することで初期妊娠の維持に寄与している可能性が考えられます。
発現とレセプターのバランスによっても変わるでしょうし。興味深いところです。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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