
はじめに
フォリトロピンデルタはヒト細胞株由来のrhFSHで、体重とAMHに基づく独自の用量設定アルゴリズムにより極端な反応を抑えつつ継続妊娠率を維持するよう設計されています。今回、オランダの一施設におけるフォリトロピンデルタ個別投与のreal-world dataをESTHER-1試験と比較した報告をご紹介いたします。
ポイント
フォリトロピンデルタの個別投与は、実臨床でもESTHER-1試験と同等の卵巣反応・継続妊娠率・出生率が得られました。
引用文献
Boom P, et al. Reprod Med Biol. 2026;25(1):e70050. doi: 10.1002/rmb2.70050.
論文内容
体重とAMHに基づく個別投与でフォリトロピンデルタを日常臨床に用いた場合の卵巣反応・妊娠・安全性が、第III相RCT(ESTHER-1試験)と同等かを検討することを目的とした、記述的なreal-world data解析です。
Erasmus University Medical Centre(EMC)において、2019年3月~2023年8月に採卵後5日目の胚移植を予定し、正常排卵周期でGnRHアンタゴニストプロトコルを用いてIVF/ICSI治療を開始した913人のうち、データ使用に同意した793人を対象としました。開始用量はESTHER-1試験のアルゴリズムに従い体重とAMHから決定した固定用量で、既治療例(全体の20%)でも前回のFSH製剤や反応にかかわらずアルゴリズム値を優先しました。AMH 7.14 pmol/L(1.0 μg/L)未満の女性は別プロトコル/用量となり除外されました。解析はフォリトロピンデルタによる初回IVF周期に限定しました。主要評価項目は継続妊娠率(移植10~11週後に少なくとも1つの胎児心拍確認)、副次評価項目は出生率、目標卵巣反応(8~14個採卵)、極端は反応、胚培養成績、安全性(OHSS入院・予防的介入)です。
結果
継続妊娠率は30.8%で、ESTHER-1試験の30.7%と同等でした。継続着床率は36.5%(ESTHER-1:35.2%)、出生率は30%(ESTHER-1:29.8%)でした。平均年齢34.1±4.6歳、体重69±11.3 kg、AMH 22.1±13.3 pmol/Lで、80%が初回体外受精、男性因子が63.7%を占めました。
卵巣反応をみると、刺激開始後の卵胞数不足(14 mm以上が3個未満)による周期中止は68人(8.6%、母数793)、過剰反応による中止は3人(0.4%)で、外れる方向は反応不良側に大きく偏っていました。トリガーを受けた711人での採卵数は10.3±5.4個(ESTHER-1:10.0±5.6個)、目標反応(8~14個)到達は348人(48.9%、ESTHER-1:43.3%)、極端反応は<4個または≥15個が162人(22.8%)、<4個または≥20個が77人(10.8%)でした。なお4~7個は本文・表に明示はありませんが、母数711から目標反応と極端反応を差し引くと201人(28.3%)と算出され、目標域に届かない不良~境界反応が一定数存在することがうかがえます。
単一胚移植93.7%、2胚移植6.3%で、双胎は4例(1.8%)、いずれも単一胚移植後の一卵性双胎でした。
day3胚は6.0±3.7個、凍結受精胚は2.2±2.3個、凍結受精胚を有する女性は73.8%でした。AMH 15 pmol/L未満では採卵8.7±4.3個・不良反応(<4個)6.1%、AMH 15 pmol/L以上では採卵11.1±5.7個・過剰反応(≥15個)22.2%・(≥20個)8.6%で、いずれもESTHER-1試験の報告と一致しました。安全性では、トリガーを受けた711人中125人(15.8%)がアゴニストトリガーを使用し、hCGトリガー後に遅発OHSSが6例発生、うち5例が3~13日入院しました。
私見
注目すべきは、アルゴリズムを使用すると、過去報告と同様に外れる際は過剰反応より不良反応に偏る点で、OHSS回避を志向した本アルゴリズムの設計思想と整合する観察結果と考えられます。
ただし、安全性に関しては確立されていますので過剰反応をどうしても避けたい場合はアルゴリズムを用いた用量によるアンタゴニスト法が良いと思います。
患者様の状況により、投与薬剤選択が重要かと考えています。
文責:川井清考(WFC group CEO)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。