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2021.01.15

卵巣刺激反応不良の患者さまに対してクロミッド®を付加したHMGアンタゴニスト法を実施すると臨床結果が改善しますか(肯定派)( Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2020)

はじめに

別コラムで、卵巣刺激反応不良の患者にHMG量を増やしても、クロミッド®を付加しても回収卵子数は変わらないというR. Moffatらの論文を紹介しました。私見の部分でも紹介しましたが、この論文と別にクロミッド®を付加すると良い結果になるという報告がありますので、こちらも報告させていただきます。

ポイント

卵巣刺激反応不良に対してクロミッド®100mgをHMGアンタゴニスト法に付加することで、E2レベル、発育卵胞数、回収卵子数、移植可能胚数が増加し、キャンセル率も減少しました。ただし、臨床妊娠と出生数に統計的な差は認めませんでした。

引用文献

Olga Triantafyllidouら. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2020. DOI: 10.1016/j.ejogrb.2020.05.026

論文内容

2015年6月から2017年9月までに卵巣刺激反応不良と診断した12名の患者を対象とした前向きコホート研究です。全ての患者は、HMGアンタゴニスト法(hMG、300 IU/日)を用いて治療を実施しました。同じ患者に次のサイクルでは、HMGアンタゴニスト法(hMG、300 IU/日)に加えて3日目から7日目までクロミッド®100mgを追加して治療を実施しました。

結果

クロミッド®を100mg添加することで、E2レベル、発育卵胞数、回収卵子数が統計学的に有意に増加し、移植可能胚数も増加しました。さらに、クロミッド®付加群ではキャンセル率の有意な減少が観察されました。クロミッド®付加群では、2名の臨床妊娠(2回の生児出産と3回の生化学的妊娠)を認めました。
結論として、卵巣刺激反応不良と診断され、過去に体外受精に失敗したことのある女性を対象に、クロミッド®100mg付加をHMGアンタゴニスト法(hMG、300 IU/日)に追加することで、刺激の結果が改善される可能性があるが、本試験では臨床妊娠と出生数で統計的な差を認めませんでした。

私見

先日紹介したブログの条件設定とは「卵巣刺激反応不良」という部分だけ共通していますが、それ以外は完全に別個の試験だと理解しています。R. Moffatらは別の患者で実施していますが、この試験では同一患者で行っています。同一患者の方がバイアスが少ないように感じると思いますが、あくまで初回のHMGアンタゴニストで結果が出ていない症例に対して、クロミッド®を付加したHMGアンタゴニストをするとどうかという論調です。つまり悪くなるという前提はないのだと思います。また前周期に卵巣刺激を行っているわけなので、同じ患者でもHMGアンタゴニスト実施状況とクロミッド®を付加したHMGアンタゴニスト実施状況は異なるはずです。初回のHMGアンタゴニストが回収卵が少なかったり、キャンセル率が高いのは刺激が合っていなかったのではないかと推測できます。
R. Moffatらの試験でもOlga Triantafyllidouらのクロミッド®を付加したHMGアンタゴニスト法でも卵巣刺激期間が11日だったのに対し、Olga Triantafyllidouらの初回HMGアンタゴニスト法は卵巣刺激期間が7日間となります。刺激前にピルも飲んでいませんからドミナントが決まっていた可能性もあるのかもしれません。
この2本の論文を通じて、HMGアンタゴニスト法で卵巣刺激反応不良ならクロミッド®を付加した卵巣刺激を考えて良いかもと思うきっかけになりました。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# クロミフェン、AIなど

# ゴナドトロピン

# 卵巣刺激

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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