はじめに
子宮内膜胚受容能検査(ERA)という238の遺伝子発現を解析する検査が開発され、個別化した着床ウィンドウの決定が可能とされています。今回、ERAが良好予後患者の胚移植において継続妊娠率を改善するかを検討したレトロスペクティブコホート研究をご紹介いたします。
ポイント
良好予後患者に対するモック周期でのERAテスト実施は、凍結融解胚移植前の継続妊娠率を改善しないようです。
引用文献
Bassil R, et al. J Assist Reprod Genet. 2018;35(7):1301-1305. doi: 10.1007/s10815-018-1190-9.
論文内容
ERAにより非受容性子宮内膜と診断される不妊患者の割合を明らかにし、ERAで提案された着床ウィンドウのずれに応じて胚移植日を調整することが、ERAを実施しない患者と比較して妊娠率を向上させるかを検討することを目的とした単施設レトロスペクティブコホート研究です。対象は、2016年4月から2017年3月の間に、凍結5日目胚(胚盤胞)移植周期前のモック周期のために受診した、良好予後の連続53例の患者(過去の凍結胚移植0~2回)でした。モック周期には、ERAとNoyes基準による組織学的評価の両方のための子宮内膜生検が含まれました(研究群)。研究群における次周期の凍結胚移植は、ERA結果に応じて調整されました。対照群は、同期間中にクリニックで子宮内膜生検およびERAを実施せずにFET周期を受けた患者で構成されました。
結果
研究期間中、503例の患者(対照群)がERAを実施せずにFET周期を受け、41例の患者がERA後にFETを受けました。患者年齢、過去の移植回数、子宮内膜厚、移植胚数、継続妊娠率(35.2% vs. 39%、それぞれ、p=NS)に群間差はありませんでした。初回または2回目のFET前にERAを実施した53例の患者のうち、5検体(9.4%)が受容期後、29検体(54.7%)が受容期前、19検体(35.8%)のみが受容期でした。研究群のうち、ERAテストで受容期前または受容期後の子宮内膜を有する女性において、ERAに応じたFETタイミングの適切な調整の結果、妊娠率は33.3%であり、これは対照群の背景継続妊娠率35.2%と同程度でした。
| ERA検査結果 | 組織学検査結果 |
|---|---|
| Pre-receptive 29症例 一致率 65.5% | Pre-receptive 18症例 |
| Receptive 10症例 | |
| Post-receptive1症例 | |
| Receptive 19症例 一致率 31.6% | Pre-receptive 11症例 |
| Receptive 6症例 | |
| Post-receptive2症例 | |
| Post-receptive 5症例 一致率 20.0% | Pre-receptive 2症例 |
| Receptive 2症例 | |
| Post-receptive1症例 |
私見
当院では、可能な限りERA検査実施時には内膜の組織検査も併用し、検査精度が落ちないような努力をERA導入時より行い、継続しています(2026年1月現在)
文責:川井清考(WFC group CEO)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。