体外受精

2020.10.13

クロミッド刺激にHMG製剤を加えると体外受精成績は変わる?(Reprod Med Biol. 2019)

はじめに

生殖補助医療の成績を画一化することが難しいのは、同じ薬を使用しても投与量・投与日数、そして組み合わせを患者さまごとにカスタマイズして治療の最大効率化を図ることを各施設が行っているからです。以前は、それぞれの治療方法を門外不出の成績のように管理されていた時代もありますが、最近では治療の透明化も含めて大手のクリニックは成績を開示している施設が増えてきました。 
生殖補助医療の成績は卵巣刺激だけではなく、培養環境・移植方法などにも大きく左右されます。そのため国内のクリニックや日本産科婦人科学会の成績などは定期的に確認するようにしています。

ポイント

クロミフェン単独刺激とクロミフェン+HMG併用刺激を比較した結果、HMG併用群では回収卵子数、受精胚数、分割胚数、凍結胚盤胞数が増加しましたが、累積出生率は同程度でした。 

引用文献

Shinya Karakida, et al. Reprod Med Biol. 2019 DOI: 10.1002/rmb2.12310 

論文内容

クロミフェンベースのミニマム刺激サイクルにおいてHMG製剤を付加投与することにより妊娠成績を改善するかどうかを評価しました。 
2016年1月から12月までの間に都内クリニック一施設でクロミフェン+HMG刺激を受けた女性年齢が30~39歳の患者231名(CC-HMG群)を、クロミフェン刺激のみの患者3657名(CC群)と1対1(223名ずつ)でプロペンシティスコアマッチングを行いました。卵巣刺激の回収卵から培養結果、および妊娠転帰を後方視的に比較検討しています。 

結果

回収卵子数、受精胚数、分割胚数、凍結胚盤胞数はCC-HMG群でCC群と比較して増加しました。しかし、累積出生率は両群間で同程度となりました。回収卵子数の増加は両群共に累積出生率の改善と有意な相関がありましたが、CC-HMG群ではCC群よりも相関が低い傾向にありました(オッズ比、1.193 vs 1.553)。クロミフェンベースのミニマム刺激サイクルでは、クロミフェンのみで刺激を開始し、卵胞期後期に内因性ゴナドトロピンの分泌が不十分な場合にのみHMGの投与を検討しました。 

論文でのミニマム刺激方法の概略 
3日目に10mm以下の卵胞が3個以上の症例に対して検証 
月経3日目からトリガーの前日まで クロミフェン50mg/日 
超音波検査とホルモンプロファイルを含むモニタリングは通常8日目に開始され、排卵誘発日まで1日おきに継続して行われました。 
トリガーはGnRH agonist剤 

HMG、FSH製剤の追加基準 
8日目に卵胞の個数や大きさなどを確認後 
血清FSH値が10 mIU/mL未満の場合、hMG、FSHを150 IU投与 
血清FSH値が10~15 mIU/mLの場合は、hMG、FSHを75 IU投与 

私見

この論文をみるとHMGを300単位でも適切に使用すると、回収卵子数、受精胚数、分割胚数、凍結胚盤胞数が増加することが示されています。今回の論文では移植方法は様々なので判断が難しいのですが、採卵あたりの妊娠数・出生数に差がありませんので、同様の刺激を行う患者様への説明資料として参考になると思っています。 

私は生殖補助医療に関わりはじめた2012年に加藤恵一先生に無理を申して、1週間見学をさせていただいたことがあります。なつかしいなー、そして、あーいう感動や刺激を、これからの世代に人たちに当院でもかんじてもらえるような施設にしていきたいと思います。 

表:Shinya Karakidaら.  Reprod Med Biol. 2019 DOI: 10.1002/rmb2.12310より改変 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# hMG

# 低刺激排卵誘発法

# 卵巣刺激

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

黄体期卵巣刺激と卵胞期卵巣刺激の胚質・倍数性への影響比較(Fertil Steril. 2026)

2026.04.14

卵巣予備能低下女性に対する経皮テストステロン投与のQOLへの影響(Hum Reprod. 2026)

2026.04.06

1回の採卵から2人の出生:one-and-doneアプローチ(Fertil Steril. 2026)

2026.03.16

プロバイオティクス・微量栄養素サプリメントと採卵成績の関連(J Assist Reprod Genet. 2025)

2026.03.10

PCOS女性におけるIVF前経腟的卵巣穿刺術の有用性(J Assist Reprod Genet. 2026)

2026.03.04

体外受精の人気記事

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

ART不成功におけるタクロリムス治療(J Reprod Immunol. 2026)

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

凍結融解胚盤胞移植後7-11日目の血清hCG値出生予測(F S Rep. 2025)

SEET法は凍結融解胚移植の成績を悪化させる可能性あり?(Sci Rep. 2025)

45歳以上の体外受精は生児を授かる治療としては「無益」・・・(Fertil Steril. 2022)

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

2024.03.14

禁欲期間が長いと妊活にはよくないです

2024.03.14

2020.10.26

夫婦の体重(BMI)は妊娠しやすさ(不妊)に影響する?(Fertil Steril. 2020)

2020.10.26

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

非前置胎盤性癒着胎盤のリスク因子(Reprod Med Biol. 2024)

2024.07.29