体外受精

2023.10.18

胚盤胞のモザイクパターンは年齢などによって変わる(F S Rep. 2023)

はじめに

異数性を判断する着床前診断を行った時に、正常と異数性という二つの結果ででてきたらわかりやすいのですが、モザイクという一部の異数性を認めるパターンが存在します。これらのモザイク胚のなかには染色体異常を認めない生児出生に至る胚が存在することがわかっており、モザイク胚に対する理解を深めていくことが重要となります。胚盤胞のモザイクパターンは年齢などによって変わるかどうか検査会社が調査した報告をご紹介します。 

ポイント

若年女性ではsingle segmental、complex segmentalモザイク割合が、高齢女性ではsingle chromosome、complex abnormal モザイク割合が増えることがわかりました。初回にモザイクを認めた患者の次周期以降のモザイク頻度は上昇しませんでした。 

引用文献

Abigail Armstrong, et al. F S Rep. 2023 Apr 8;4(3):256-261. doi: 10.1016/j.xfre.2023.03.008. 

論文内容 

17,366名86,208胚について、NGSを用いた着床前検査を実施した横断コホート研究です。モザイク胚は、low-level(20%~40%)、high-level(40%~80%)、およびモザイクエラーのタイプ(single segmental、complex segmental、single chromosome、complex abnormal mosaic)に分類しました。モザイク率は年齢(<35歳、35~37歳、38~40歳、41~42歳、>42歳)によって層別化しました。評価項目は年齢別の着床前検査結果分布とモザイクタイプの割合、次周期にモザイク胚が発生する割合としました。 

結果 

今回の検討のうち、44%がeuploid、40.2%がaneuploid、15.8%がmosaicでした。low-level mosaic、high-level mosaicともに、若年女性では割合が高くなりました。mosaic胚に絞って観察すると、<35歳女性ではsingle segmental、complex segmentalの割合が全年齢層で最も高く(それぞれ37.9%と6.8%)、>42歳女性ではsingle chromosome、complex abnormal mosaicの割合が最も高くなりました(それぞれ37.1%と34.0%)。モザイク率は生殖医療施設によってばらつきがありましたが、3年間のモザイク率の中央値は14.48%から17.72%でした。前周期でモザイク胚と診断された場合でも、次周期でモザイク胚となる確率は増加しませんでした。 

私見

胚盤胞の拡張がtrophectodermを機械的に刺激し、nuclear budding、DNA sheddingを引き起こす要因となっていること、核周囲のケラチンレベルが低い細胞ほど、DNA sheddingが起こりやすいことをヒト胚盤胞で検証しています。
Ana Domingo-Muelas, et al. Cell. 2023 Jul 20;186(15):3166-3181.e18. doi: 10.1016/j.cell.2023.06.003.
着床の観点からすると、nuclear budding、DNA sheddingが起きてでもいいので、trophectoderm細胞数が増えることが着床の観点からは有用なのかもしれません(当院培養士の勉強会から)。たしかに、胎盤病理はモザイクが多いですし、trophectoderm細胞数が着床に重要であることがわかっていますので、いわれてみれば腑に落ちます。

モザイク胚について、他コラムで取り扱ってきました。正倍数性胚がない場合、どのモザイク胚まで移植対象と考えるか、さまざまな角度から検証が必要だと考えています。 

<関連コラム>

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 受精卵の評価

# 着床前遺伝学的検査(PGT)

# 年齢素因

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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