
はじめに
SGA児は早産、新生児低血糖、呼吸窮迫症候群などの周産期合併症と関連し、長期的な代謝・発達障害の素因にもなり得ます。その主因は胎盤機能不全とされます。妊娠前の低体重(BMI<18.5 kg/m²)はSGAの独立した危険因子であり、メタアナリシスでもリスク上昇が示されています。低体重女性は栄養予備能の不足や内分泌の不均衡を伴いやすく、ART下での卵巣刺激反応や子宮内膜受容能に影響する可能性があります。凍結融解胚移植がSGAを減らすという報告は一般不妊集団中心で、低体重女性に特化したデータは乏しいのが現状です。今回、この高リスク集団を対象に新鮮胚移植(fresh-ET)と凍結融解胚移植(frozen-ET)を比較したコホート研究をご紹介いたします。
ポイント
低体重女性では凍結融解胚移植が新鮮胚移植に比べSGAリスクを低下させ、母児合併症の増加は認められませんでした。
引用文献
Jiexin Tang, et al. J Assist Reprod Genet. 2026. doi: 10.1007/s10815-026-03920-3.
論文内容
低体重女性はSGA児出産の高リスク群であることをふまえ、ART下でfrozen-ETがfresh-ETと比較してSGA率を減少させるかを検討することを目的とした、単施設レトロスペクティブコホート研究です。2016年8月から2024年6月の臨床データベースを用い、ART後に生児単胎を出産した低体重女性(妊娠前BMI<18.5 kg/m²)1140人を対象としました。新生児出生体重に影響し得る基礎疾患(PCOS、子宮形態異常、心疾患、慢性高血圧、糖尿病など)を有する女性は除外しました。fresh-ET群340人、frozen-ET群800人に分け、母体・胎児の周産期予後を比較しました。連続変数はStudent’s t検定(分散不均一時はWelch’s t検定)、カテゴリ変数はχ²検定(期待度数5未満ではFisher’s exact検定)で解析し、SGAの危険因子は二項ロジスティック回帰で同定しました。SGAは在胎週数・性別ごとの出生体重10パーセンタイル未満と定義しました。
結果
frozen-ET後の単胎分娩はfresh-ETと比べSGA率が有意に低く(13.8%[47/340]vs. 7.3%[58/800]、p<0.001)、平均出生体重は高値でした(3127.8±465.3 g vs. 3260.4±437.9 g、p<0.001)。低出生体重(6.2% vs. 3.6%、p=0.054)および極低出生体重(0.9% vs. 0.3%、p=0.160)は数値上fresh-ETで高かったものの有意差はありませんでした。新生児の先天異常、早産、HDP、GDMにも有意差を認めませんでした。交絡因子(母体年齢、妊娠前BMI、不妊期間、AMH値、ART法、移植胚数、胎児性別)を調整後、frozen-ETはSGAリスク低下と独立して関連しました(aOR 0.42、95%CI 0.22–0.78、p=0.006)。妊娠前BMIもSGAリスク低下と独立して関連しました(aOR 0.74、95%CI 0.57–0.97、p=0.026)。frozen-ET群内では自然周期とホルモン調整周期でSGA率・出生体重は同等(7.1% vs. 7.5%、p=0.820)でしたが、HDPはホルモン調整周期で高頻度でした(5.3% vs. 1.9%、p=0.008)。SET周期に限定した解析でも、fresh-ET群でSGA率が高い傾向は一貫していました(14.4% vs. 7.2%、p=0.017)。
私見
凍結融解胚移植がより高い出生体重・低いSGA率と関連するという蓄積された知見と一致しており、肯定的な報告として Westvik-Johari K, et al. PLoS Med. 2021、Tocariu R, et al. Medicina (Kaunas). 2024 が挙げられています。一方、否定的な報告として Ganer Herman H, et al. Reprod Sci. 2022 は移植様式と出生体重・SGA率に有意な関連を認めませんでした。
後ろ向き報告ではありますが、もともと生殖補助医療が持つ傾向を利用し避けうるべき周産期合併症予防に努めるのは、理にかなった治療計画なのかもしれません。
今後の質の高い研究に期待です。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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